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憲剛復帰戦で輝いた旗手怜央の強み。
客観視と、ライバル三笘薫の存在も。
posted2020/08/31 17:30
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph by
J.LEAGUE
8月29日、川崎フロンターレが5-0と大勝を飾った清水エスパルス戦。この日の主役は、昨年の大怪我により戦列を離れ、10カ月ぶりの復帰となった中村憲剛だった。多くのサッカーファンの視線が14番に注がれるなか、中村は千両役者ぶりを遺憾なく発揮し、自身のゴールで最高の夜に花を添えた。
ただ、この最高の瞬間を作り上げることができたのは、決して中村だけの力ではない。チームメイトやスタッフ、サポーター。多くの力が合わさって復帰の舞台は用意された。
そんなチームの偉大なバンディエラが輝く舞台を整えるのに一役買ったのが、大卒ルーキーの旗手怜央だ。
前半21分、高い位置でボールを受け右足を振ると、ボールは相手に当たってディフレクトしながらゴールに転がり込み、チームの先制点となった。そして圧巻だったのは2点目だ。2-0で迎えた後半29分、レアンドロ・ダミアンからのパスを受けて前にボールを運び、ペナルティーアークの手前から右足を一閃。自身の特徴でもあるパンチ力のあるミドルシュートでゴール左に突き刺した。
試合の大勢を決めるゴールを奪った旗手は、これでお役御免。偉大な先輩と抱擁を交わし、ピッチを後にした。
「少し時間がかかるかも」というメモ。
前節に続いて2試合連続ゴール。ウイングやインサイドハーフといったポジションで起用されながら、結果と内容の二兎を追う男は、また一歩、次のステップを踏んだ。
昨年、順天堂大学に在学しながら特別指定選手として練習参加していたときは、まだまだ大人しかった印象がある。東京五輪世代の代表活動では巧みなボール捌きやスムーズにゴールへと向かうプレーで違いを見せていたが、川崎ではどちらかというと周りに合わせることを意識し過ぎて小さく纏まっているようにも感じた。昨年の自分のノートに目を通すと名前の下に「少し時間がかかるかも」と書き綴っており、早期のフィットを予想していなかった。
ところがどうだろう。
今季の幕開けとなったルヴァンカップ・清水エスパルス戦で、さっそく途中出場からアシストを記録。新型コロナウイルスによる中断から再開した後は、リーグ屈指の選手層と厳しいポジション争いが繰り広げられる川崎で第5節の横浜FC戦を除き全てのリーグ戦に出場している。