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マイノリティーとして生きる前田健太、菊池雄星の「BLM」への言葉。政治的ではなく、人間として。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty Images
posted2020/09/07 08:00
例年の4月15日でなく8月28日となった「ジャッキー・ロビンソン・デー」。背番号42のみならず、それぞれが「BLM」のTシャツを着用(写真は史上初の女性コーチ、ジャイアンツのアリッサ・ナッケン)。
「気持ちを届ける」前田健太の思い。
一連の黒人銃撃事件への抗議運動は、ウィスコンシン州ミルウォーキーを本拠とするNBAのバックスがプレーオフの試合をボイコットすると発表したことを機に、MLBだけでなく女子テニスの大坂なおみの試合棄権など、スポーツ界全体に広がった。
前田健太が所属するツインズは選手間で話し合った結果、当日試合をするべきか否かを投票で決めた。コロナ禍に伴う短いシーズンでダブルヘッダーが増加し、過密日程を消化することへの心身への負担も少なくない。それでも、選手達が出した結論は試合をしないという抗議行動だった。
8月30日のタイガース戦後、今季初黒星を喫した一方で前田は正面を見据えて言った。
「今年、ミネソタもそうですけど、差別に関する事件がたくさん起きていた。米国では野球は人気のスポーツですし、日本もそうですけど選手達の気持ちを届けていけるようにしたいと思っています。選手の意思で試合がなくなったりとか、発信することで世の中が変わっていくと思うので、みんなで思いを発信していければと思います」
チームが変わっていける。
主義主張の強い米国でも、一般的に「政治と宗教の話」は避けた方がいいと言われる。だが、今回の差別問題は「政治的ではなく、人間としてのもの」と声を挙げる選手が続出した。
慎重に言葉を選びながらも、前田は続けた。
「選手の意思で試合をやらないというのは、僕は初めて。選手みんなで、試合をやるべきではないという思いがひとつになった。みんなの意見がひとつになって世界に発信するのは初めてだったので、チームでひとつになって変わっていくことができるんじゃないかと思います」
菊池、前田とも、日本でプレーを続けていれば今回の差別問題を本当の意味では実感できなかったかもしれない。しかし、マイノリティーという立場を米国で実感している彼らの言葉は重い。
涙を浮かべて語る同僚の経験談を共有し、自らの言葉で発信していくことは、日本人メジャーリーガーとしても、重要なことではないだろうか。