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八村塁、渡邊雄太はBLMにどう対応?
バブルでプレーする2人に聞いてみた。
posted2020/08/05 20:00
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Getty Images
試合前、アメリカ国歌が流れるなかで選手やコーチが整列する。NBAだけでなく、アメリカのスポーツシーンではよく見る光景だ。そのお馴染みの光景が、シーズン再開後の“NBAバブル(フロリダの隔離エリア)”内では力強いメッセージの象徴となっている。
試合前、国歌が流れる時間になると、両チームの選手、コーチ、スタッフはサイドライン沿いに一列に並ぶ。彼らの前にはフロアに大きく書かれた“BLACK LIVES MATTER”(黒人の命を軽視するな)のスローガン。そして、彼らが着ているのは、同じフレーズが書かれた黒のTシャツ。多くの選手、コーチは片膝をつき、腕を組み、一部の選手やコーチは立ったまま、全員が黒人が人種差別され続ける原因となっているアメリカの社会構造を変えることを誓い、そのために声をあげ、行動をしていくという意思を表明している。
その中には、ワシントン・ウィザーズの八村塁や、メンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約をしている渡邊雄太もいる。
八村は、再開後最初の公式戦となった7月31日のフェニックス・サンズ戦後に、米国歌のときのデモンストレーションについて「国歌斉唱のときにニーリング(膝つきの姿勢を取ること)をするということは、僕としてもチームとしても、すごく大きなことをやっていると思います」と、胸を張った。
NBAにも広く深く浸透したBLM運動。
アメリカでは、5月にミネソタで黒人男性、ジョージ・フロイドが警察官に殺害されたことをきっかけに、人種差別に反対する「BLM(ブラック・ライブズ・マター)」の運動が広がった。
コロナ禍のためにシーズンが中断し、それぞれ家で自主隔離期間を過ごしていたNBA選手たちも例外ではなかった。多くの選手たちがデモ行進に参加し、抗議の声をあげた。リーグに所属する選手のうち約75%が黒人選手というNBAにとって、この事件をはじめとする人種差別、それを生み出す社会構造の問題は他人事ではなかったのだ。
さらには、黒人選手だけでなく、白人の選手やコーチたちも、そんな社会構造が続いている原因は、これまで何もしてこなかった自分たちにもあるとし、同僚たちの声に耳を傾け、仲間の痛みを理解し、行動に移している。
単に思いつきや義憤によるものではなく、基本的な人権が守られるという、当たり前のことが当たり前となる社会を残すための行動だ。