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グランドスラムを打って謝罪する?
メジャーに受け継がれる不文律。
posted2020/08/24 11:30
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph by
Getty Images
どんな世界にも、「暗黙のルール」は存在するものだが、それらも時代が変遷するにつれ、徐々に変わっていくものなのだろうか。
メジャーには「unwritten rules(明記されていないルール)」と呼ばれる不文律が、古くから受け継がれてきた。そんなグレーゾーンに脚光が当たるプレーが起こった。
8月17日に行われた「レンジャーズ-パドレス戦」。パドレスが10-3と大量リードした8回表1死満塁の状況で、パドレスのフェルナンド・タティスJr.が、カウント3ボール0ストライクから満塁本塁打を放ったことが、米国球界で論議を呼んだ。
試合の形勢がほぼ決まった終盤に、相手に対してさらにムチを打つようなプレーは恥ずべき、とするのが、これまでの不文律とされてきた。試合後、大敗したレンジャーズのクリス・ウッドワード監督は「明記されていないルールは数多く存在するし、今も維持されている。(3-0からのスイングを)私は個人的に好きではない。7点リードの8回で、カウント3-0から打つのは、いいタイミングではない」と、タティスJr.の一打を痛烈に批判した。
グランドスラムを打って謝罪する。
これに対し、SNS上では是非を問うアンケートが行われたのをはじめ、タティスJr.を擁護する意見が相次いだ。
「サイン盗みをしたアストロズが謝罪しても、グランドスラムを打って謝罪する必要はない」
「3-0からでも、投手がいい球を投げればいい」
そもそも野球規則に反しているわけではなく、試合進行上の“ルール”では何ら問題はない。ただ、カウント3-0となった時点で、パドレスのグレン・ホフマン三塁コーチは「待て」のサインを出していた。それが、パドレス側の礼儀だった。ところが、タティスJr.は、そのサインを見逃していた。
「試合に集中していて、三塁コーチを見ていなかった。幼い頃から野球をやってきて、球界に多くの暗黙のルールがあることは知っていたが、今回は知らなかった」