Jをめぐる冒険BACK NUMBER
名古屋vs.川崎の濃密な「180分」。
ルヴァン杯を含めた駆け引きを推理。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/08/26 08:00
2019年にも好勝負を展開したグランパスとフロンターレ。戦術や個人勝負を巡る駆け引きを考察したいなら、両クラブの対戦は今、必見である。
守田が語る「脇と守備のスイッチ」。
一方、「守備時に(インサイドハーフの)下田(北斗)選手がヘルプに降りてきて、安定させようとしていたが、手応えは?」との質問を受けた守田は、こんなふうに答えた。
「ルヴァンカップではアンカーの脇をうまく使われたので、その改善として守備時はボランチ2枚でプレーしました。4-3-3のときとハメ方が全然違って、僕の脇を使われなかったのは良かったんですが、それ以上にチームの守備に対してのスイッチが入らなかったり、奪いどころがはっきりしない現象が起きてしまった」
本音を語ったのはどちらだったか。いや、どちらも本音だったかもしれないが、個人的には、守田の言葉にうなずけた。
ADVERTISEMENT
後半に入ると、川崎は得意の選手交代で流れを変えようとした。大島僚太と旗手怜央を投入して名古屋を押し込むと、さらに小林を送り込んで攻勢に出る。
だが、これまでスーパーサブの役割を担うことの多かった三笘を、この日はスタメンで起用。その三笘が負傷交代となったあとは、ギアがなかなか上がらない。
マッシモの交代策と守備陣の奮闘。
一方、名古屋のフィッカデンティ監督もカードを切って対抗する。
53分、スピードスターの相馬勇紀を左サイドハーフに送り出してカウンターの色を強めると、79分には「柏戦あたりからずっと足に痛みがあった」(フィッカデンティ監督)という前田を下げて、オ・ジェソクを右サイドバックに投入。1列上がった成瀬とオ・ジェソクでサイドに蓋をするとともに、トップ下に移ったマテウスが、川崎の喉元にナイフを突きつけるかのごとく、カウンターの脅威をちらつかせた。
87分には高さと運動量を備えるFW山崎凌吾を投入し、前線からのプレスを強めるとともに、攻守両面におけるセットプレーの強化を施した。
そして何より見逃せないのが、守備陣の奮闘だ。丸山が、中谷が、吉田が、稲垣が川崎の選手に必死に食らいつき、足を伸ばし、身体を投げ出して防ぐ姿は感動的だった。中谷が胸を張る。
「夢生くんがいい時間帯に点を取ってくれて、ディフェンス陣としても踏ん張りがいのあるいい試合でした。ディフェンス力が上がってきているからこそ、こういった勝ち方ができたと思います」