Jをめぐる冒険BACK NUMBER
名古屋vs.川崎の濃密な「180分」。
ルヴァン杯を含めた駆け引きを推理。
posted2020/08/26 08:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE
無敵の川崎フロンターレを止めるのは、果たしてどこか――。
これが、コロナ禍に揺れる2020年シーズンのJ1における大きな焦点だった。
今季はリバプールを思わせる4-3-3を導入。従来のショートパス主体のスタイルに、ミドルレンジ、ロングレンジのパスを織り交ぜ、ダイナミックな飛び出しも増えた。
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リーグ戦11試合の得点数は、他を圧倒する34得点。ベンチを見れば、小林悠、齋藤学、守田英正、車屋紳太郎、三笘薫……とA代表、五輪代表クラスが目白押し。前半は相手を揺さぶって疲れさせ、後半に叩きのめす横綱相撲で10連勝をマーク。ターンオーバーもぬかりなく、2位に勝点10差を付けて、独走態勢に入りつつあった。
そんな“巨人”に今季、初めて土を付けたのは、名古屋グランパスだった。
8月23日に豊田スタジアムで行われた一戦は、44分にマテウスのクロスを金崎夢生が頭で合わせて先制。虎の子の1点を守り抜き、ミッションを成し遂げたのだ。
ゴール前での攻防が白熱し、エンターテインメント性に富んだこの試合。もっとも、11日前に行われたルヴァンカップの同カードと合わせて180分の試合として眺めると、面白さがいっそう浮かび上がってくる。
ルヴァン杯、15分からの駆け引き。
注目すべきは、ルヴァンカップの前半15分を境にした、両チームの駆け引きだ。
8月12日のこの試合で、名古屋のフィッカデンティ監督は強気の姿勢を見せていた。本来は2列目のゲームメーカー、ガブリエル・シャビエルを初めてボランチで起用し、川崎に対して真っ向勝負を挑むのである。
果たして、何が起こったか――。
センターバックの丸山祐市と中谷進之介が、川崎のセンターフォワード、小林の両脇に空いたスペースでフリーとなったシャビエルに次々とボールを預け、名古屋が中央のエリアを支配したのだ。その流れに乗って名古屋は先制点を奪うなど、開始7分で2-1とした。
だが、そこは、さすがの川崎。15分過ぎに守備の陣形を4-3-3から4-4-2に変更して中央を固め、パスルートを遮断する。こうして流れを引き寄せた川崎が同点に追いつき、最終スコアは2-2。両チーム仲良くプライムステージ進出を果たすのだ。