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ついに再開、テニスのワールドツアー。
欧米でできてアジアでできない理由。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/08/11 20:00
ワールドツアーの再開初戦となったパレルモオープンの決勝。フィオナ・フェロ(フランス/写真右)がキャリア2つ目のタイトルを獲得。
「以前のような感覚で転戦のスケジュールは組めない」
しかし、今のところひしひしと感じるのはアジアの疎外感である。
レキシントンの本戦に土居美咲が出場していることは頼もしいが、アメリカとヨーロッパ以外からの出場者はほとんどいない。ランキング的には日比野菜緒も出場できたはずだが、少なくとも日比野は1カ月前の時点でツアー再開には否定的だった。
「まだ始めるのはちょっと早いと感じています。行く先々や帰国したときの一定期間の隔離などを考えれば、以前のような感覚で転戦のスケジュールは組めない。ワクチンができない限りは、それは変わらないと思います」
日比野だけではなく、男子も含めて日本国内を拠点とするほとんどの選手が似通った戸惑いを抱えている。
イタリア、アメリカができるなら日本でも!?
そうした状況の中、ふと残念に思えたことは、イタリアが開催できるなら、アメリカができるなら、日本だってアジアだってできたのではないかということだ。
本来なら秋はアジア・シリーズの時期で、WTAツアーのカレンダーにはもともと中国7大会、日本2大会、韓国と香港でもそれぞれ1大会あった。しかし、7月10日に中国が「原則として年内のスポーツの国際大会は実施しない」という国家としての方針を発表し、その2週間後には男女ともに中国におけるツアー大会全ての中止が告知された。特に女子テニスは中国がもっとも力を入れて大会を招致してきたスポーツであり、2週間のタイムラグには開催への模索と逡巡の跡がうかがえる。しかし、なんとしても開催するのだという姿勢につながるだけのテニスの歴史と伝統は、残念ながら中国にはない。