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ついに再開、テニスのワールドツアー。
欧米でできてアジアでできない理由。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/08/11 20:00
ワールドツアーの再開初戦となったパレルモオープンの決勝。フィオナ・フェロ(フランス/写真右)がキャリア2つ目のタイトルを獲得。
欧米から果たしてトップ選手がアジアに来るか?
この中国での決定のあとを追うように、本来の9月から11月に日程をずらしていた東レパンパシフィック・オープンも中止を発表した。公式では唯一「調整中」となっているソウルの大会も、地元記者によると「とても開催できるムードではない。中止の発表は時間の問題」とのことで、アジアの全滅はほぼ間違いない。
東レPPOの大会関係者によると、あらゆる対策を講じて開催を目指していたが、日本がまだ多くの国からの入国を制限していることが最大のハードルだったという。たとえ11月までに入国制限が解除されたとしても、今週のレキシントンの大会のように欧米からトップ選手がアジアにやって来るだろうか。
どうしてもポイントや賞金が欲しい選手はリスクを負うかもしれないが、『プレミア』のカテゴリーに属する大会がその格を保つだけの選手を集めることは極めて難しい。
また、アジアにはトップ選手も惹き付ける異文化があったが、コロナ禍ではそれを楽しむ機会も失われた。それを考えれば、コロナ発生の地である武漢を含めた全ての中国の大会中止はやむをえず、中国なしにアジアのツアーはなりたたないのが実状だ。
欧州なら欧州の選手だけで大会が成立する!?
そういえば、ノバク・ジョコビッチは自身が率いたエキジビション・ツアーで失敗したものの、コロナ禍の相当早い時期から「ツアー再開はそれぞれの地域ごとに徐々に始めるべき」という意見を発していた。
その通りだったのだろう。ただし、それは欧米にのみ言えることだ。
ヨーロッパの大会なら、たとえヨーロッパの選手しか出場しなかったとしても成り立つ。
6月からEU圏内は制限なしで往来ができるようになり、実際、パレルモの大会は南米からの選手1人を除いてヨーロッパの選手ばかりだった。トップ10プレーヤーこそいなかったが、3人のトップ20プレーヤーが出場している。