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“デスマッチのカリスマ”葛西純、
後楽園復帰戦での死闘と笑顔の理由。

posted2020/08/09 11:30

 
“デスマッチのカリスマ”葛西純、後楽園復帰戦での死闘と笑顔の理由。<Number Web> photograph by Horihiro Hashimoto

久々の後楽園で佐久田俊行を下した葛西純(右)。試合ぶりだけでなく、充実した表情も見ものだった。

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Horihiro Hashimoto

 デスマッチファイターには笑顔が似合う。

 本当の話だ。リングの上では喜怒哀楽すべてが出ると言われるが、デスマッチの場合は“狂気”も欠かせない。蛍光灯で殴って破顔一笑、やられた側も血だるまで立ち上がって不敵に笑う。お互い血を流せば流すほどテンションが上がる。それがデスマッチファイターというものだ。

 7月28日、後楽園ホールで見せた“デスマッチのカリスマ”葛西純の笑顔はまた格別のものだった。

 所属するFREEDOMSの“自粛明け”初となる後楽園大会。『東京デスマッチカーニバル』と題した、葛西のプロデュース興行である。葛西にとって、昨年12月以来の“聖地”登場だった。

 葛西は椎間板ヘルニアで長期欠場を余儀なくされていた。それ以前から痛む腰と闘いながらデスマッチを繰り返していたから、欠場は1日でも長く選手を続けるための前向きな決断ではあった。

脳内に響き渡った“葛西コール”。

 とはいえファンも本人ももちろん平静ではいられなかった。

 葛西は欠場中、自身のツイッターアカウントでの発信を中断している。かわりに娘のアカウントが、父の気持ちを代弁するようになった。ちなみに娘は2歳。“葛西純の気持ち”を実際に書いているのが誰かは言うまでもない。それが葛西なりの、プロレスとの線の引き方だった。

 カムバックが待たれるところにコロナ禍が来て、葛西の復帰はFREEDOMSの興行再開と時を同じくすることになった。ド派手な復活とはいかない。収容人数ほかさまざまな制限がある中、できることからやっていくしかないのが現状だ。

 7.28後楽園大会も、客席数はフルキャパシティの3分の1ほど。もちろんマスク必須、声を出しての応援もできない。だから、いつもは入場時に鳴り響く“葛西コール”もない。

 だがこの日、観客の手拍子とともに“葛西コール”が確かに聴こえた。いや「脳内で」という話なのだが、会場がそれだけの熱気と期待感に包まれていたのだ。COVID-19もプロレスファンの想像力は奪えない。

 おそらく葛西自身も大コールを聴いた。そしてリングに上がると、客席を見渡して満足げに笑った。満面の笑みというやつだ。観客の拍手と“脳内葛西コール”がさらに高まる。

【次ページ】 入り乱れた狂気と凶器。

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