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息子と同じ33歳差の初シングル対決。
武藤敬司が清宮海斗に伝えたもの。
posted2020/08/11 19:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
8月10日、横浜文化体育館。武藤敬司の得意技「ドラゴンスクリュー(ヒザを巻き込む足殺し)」を清宮海斗が防いだとき、会場からは驚きの声が上がった。それも3度。武藤を研究してこの特別な戦いに挑んだ清宮の姿勢が見えた。
清宮は「オレなら行ける」と宣言して「プロレス界の先頭に立っていくエネルギー」を武藤との戦いにぶつけた
武藤57歳。清宮24歳。なんと33歳の年齢差だ。
「うちの息子と同じ歳だから、どうしても上から目線の感じで見ちゃうよね。だけれど、会社(ノア)がこの試合を組んだ意図も彼に対する期待感があるからだよな」
武藤は清宮との対決が決まるとこう話していた。
「でも、オレ、行くとこ行くとこ、どこでもトップだからさ。どのテリトリーでもね。ノアのベルト、まだ、取っていなかったね」
武藤にとっては5年ぶりのシングルマッチ。
武藤と言えば、1984年の新日本プロレスでのデビュー以来、プロレスをやるために生まれてきた天才ぶりをいかんなく発揮して、ザ・グレート・ムタとして全米マットでもトップ。新日本プロレスではムタとしての1回を含めてIWGPヘビー級王座4回、全日本プロレスではムタとしての2回を含めて三冠王座3回とタッグ王座も合わせれば、一時は6本のベルトを巻き、ベルト・コレクターの異名も取った。
そんな武藤だが、これからノアのマットに上がって戦いを続けるならもちろん「GHCも狙うよ」という意思表示だ。
武藤にとっては5年ぶりのシングルマッチ。2018年3月に両ヒザに人工関節を入れた。でも、スタミナにも不安があったのだろう。ムタとしてはシングルマッチを戦っているが、武藤の方は戦い方としてはシングルマッチを回避して、タッグ戦だけで試合をこなしてきた。
「通過点ですよ」
武藤は57歳でも通過点だという。