濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“デスマッチのカリスマ”葛西純、
後楽園復帰戦での死闘と笑顔の理由。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byHorihiro Hashimoto
posted2020/08/09 11:30
久々の後楽園で佐久田俊行を下した葛西純(右)。試合ぶりだけでなく、充実した表情も見ものだった。
「血を流す非日常はリング上だけでいいんだ」
プロレスラーが互いの体を傷めつけ合うのには意味がある。デスマッチだって同じだ。
葛西は“刺激”を求めながら、デスマッチで血だらけになる意味を明確に言葉にするようになった。コメントにメッセージ性があるのだ。
昨年夏、アメリカのデスマッチファイターたちと闘った際には、こんな言葉を残している。
「アイツらは兄弟、人類みな兄弟だ。今この世界中でいろんなことが起きてる。内紛もあるし、血を流して命を落とす人がいる。でも血を流す非日常はリング上だけでいいんだ。血が見たけりゃデスマッチを見にこい!」
デスマッチで狂気を極め、葛西純はプロレス界だけでなく“世界”のすべてを射程に入れた。デスマッチでしかできない表現があり、葛西純だから言える言葉がある。“カリスマ”はダテではないのだ。
そしてシャワーで血を洗い流し、葛西は愛する家族の待つ家へと帰っていった。