話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
札幌の無敗は荒野拓馬が支えている。
ミシャ式を極めた先に代表もある。
posted2020/07/31 20:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
J.LEAGUE
北海道コンサドーレ札幌が好調だ。
7月4日のJ1リーグ再開後、6試合を3勝3分けで終えて7月を乗り越えた(現在8位)。鹿島、横浜F・マリノスら強豪に勝ち、いつもなら取りこぼす展開だった湘南戦、仙台戦に負けずにドローで終えるなど、チームとして地力がついてきたことが見て取れる。
リスタート時は鈴木武蔵の活躍が目立った。
だがFC東京戦で存在感が際立ったのは、“不在の”荒野拓馬だ。
仙台戦で退場してFC東京戦は出場停止だったが、その後の横浜F・マリノス戦では「荒野のチーム?」と思わせるほどの活躍だった。
この試合に、荒野はいつもと異なる気持ちで入っていた。
仙台戦で関口訓充選手と競り合いになって倒れ、起き上がる際に関口を蹴り上げて退場になった。その行為はSNS上で話題になり、厳しい声が飛んだ。荒野にもその声が届いており、試合前日には「今後の自分の行動で信用を取り戻すしかない。今はこれからどう変われるかという点に集中している」と新たな決意を語っていた。
攻守の最前線にいた荒野。
マリノス戦、荒野は本職のボランチのポジションではなく、インサイドハーフのポジションにいた。ジェイやドウグラスなど高さと迫力のある前線の選手が欠ける中、ペトロビッチ監督曰く「モビリティのある選手」を起用し、全員が攻守に絡むサッカーにシフトし、マリノスのパスを封じ込めるようにしたのだ。
荒野は、その攻守の最前線にいた。
マンツーマンなので相手に鋭い出足で激しくチャージし、ボールを奪うとショートカウンターを仕掛け、前に飛び出していった。攻撃でも深いところでボールをキープして全体を押し上げる時間を作り、攻撃を組み立てた。
もともと運動量のある選手だが、この日はさらに上下に激しく動きまわり、積極的に攻守に絡もうという意識が見られた。