ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
ボクシング興行再開の現状と課題。
リング上は活況、経済的には……。
posted2020/07/28 11:40
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
国内のプロボクシング興行が再開されて2週間ほどがたった。
7月12日、愛知県刈谷市の中日本新人王戦から始まった興行は16日に東京、19日に沖縄県うるま市、22日に東京、25日に神戸市、26日にまた愛知県刈谷市の6つ。ボクシング興行再開の現状と課題をレポートする。
16日に後楽園ホールで開催されたダブルタイトルマッチは、無観客試合ながら興行再開後初めてとなるタイトルマッチ。出場選手も世界バンタム級2冠王者の井上尚弥・拓真兄弟の従兄弟、日本スーパー・ライト級王者の井上浩樹、さらにはロンドン五輪バンタム級銅メダリストで東洋太平洋フェザー級王者の清水聡(ともに大橋)とあって注目を浴びた。
結果は清水こそ勝利したものの、井上が挑戦者の永田大士(三迫)にまさかの7回負傷TKOでプロ初黒星を喫して王座陥落。井上が翌日にあっさり引退を表明したのには驚かされた。
聞くところによれば、井上は長年けがに苦しんでおり、今回の試合に向けてもほとんどスパーリングができなかったという。
ちなみに永田の王座獲得で、三迫ジムは史上最多となる日本王者が同時に6人という記録をマークした。無観客のリングで達成された偉業だった。
開催はよかったが、練習不足は顕著。
印象に残ったのはプロモーター、大橋秀行会長のコメントだった。同会長は真っ先にタイトルマッチを開催してボクシングここにありをアピールしたいと語っていただけに「開催して本当によかった」との言葉には実感がこもる。
一方で、「みんな同じだけど、対人練習(スパーリングなど)の不足は2試合とも出た」とも話し、新型コロナウイルスによるジム休館、試合間隔があいた影響を指摘した。