欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
久保建英が1年間で手に入れたもの。
立ち位置、間合い、瀬戸際の胆力。
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byMutsu Kawamori/AFLO
posted2020/07/22 11:50
オサスナとの試合でも存在感を発揮した久保建英。移籍は確定的だが、マジョルカで得たものは大きかった。
味方を使うか、単独で仕掛けるか。
シーズン終盤のゲームでは、対戦相手がダブルチームで封じようとしてきました。アタッキングサードで久保がボールを持つと、ほぼ例外なく2人が制限をかけてきたのです。
突破の局面で自らが相手を剥がすだけでなく、いかに周りを使うかというフェーズへ切り替えていったのですが、そこでの判断は常に正しいものでした。いいタイミングといい角度でサポートを得られれば味方の選手を使い、そうでなければ単独で仕掛けていく、という使い分けができていました。
単独での打開では2人、あるいは3人を剥がさなければいけませんが、そのための準備も整っていました。1対1と1対2では、ボールの運び方やコース取りなどが変わってきます。「こうやって2人(あるいは3人)を外す」というデザインを、あらかじめ思い描いておく必要がある。
1部残留が目標のマジョルカだからこそ求められた仕事で、それが関係者の眼に留まって評価を高めたのですから、自らの力で未来を切り開いたと言えるのでしょう。
レアルへ移籍した時のための予行演習。
残念ながらマジョルカは降格の憂き目に遭いましたが、再開後は毎試合が負ければ終わりのトーナメント戦のようでした。メンタル的な負荷は相当なものだったでしょう。
これもまた、マジョルカだからこそ経験できたものです。常勝を義務づけられるレアル・マドリーでプレーすることになった際に、応用の利く経験です。「負けられない」というプレッシャーを受け、それでも地力を発揮するストレス耐性が磨かれました。
おそらく次のシーズンは、違うチームでプレーするのでしょう。新たな競争に挑むことになりますが、久保は環境適応能力が高い。日本国内だけでもFC東京と横浜F・マリノスに所属し、様々なカテゴリーの日本代表にも招集されてきました。監督がイメージするサッカーを短期間で理解し、少ないトレーニングでチームメイトと理解を深め合うことができるのです。ピッチ内にとどまらない彼の強みであり、ラ・リーガのクラブでプレーするなら今シーズンの上積みがすでにある。
果たして彼は、どのような決断を下すのか。新シーズンを楽しみに待ちたいと思います。