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「どうせアウトになるんなら」
丸佳浩が見せた“我慢”の打撃。
posted2020/07/20 08:00
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph by
Hideki Sugiyama
シャークポーズやらマルポーズやらの“非接触”スタイルでヒーローを讃えるベンチの指揮官の姿は、苦境の中の癒やしになる。
7月4日の東京ドーム、ジャイアンツの丸佳浩が初回、ドラゴンズの吉見一起から先制の3ランホームランを放った。満面に笑みを浮かべた原辰徳監督は、両腕で頭の上に丸の形を作って背番号8の後継者を迎える。お馴染みのマルポーズだ。1試合6打点、2ホームランの活躍に原監督は「いや、もう百点満点ですね」と、手放しで丸を褒め讃えた。
しかしながら開幕直後の丸は思うような結果を残せなかった。開幕から9打席ノーヒット、今シーズンの第1号ホームランが出たのは10試合目、42打席目のことだ。それでも丸はヒット以外の方法でチームに貢献していた。象徴的だったのは開幕2戦目のこと。この試合、ジャイアンツの先制点はワンアウト三塁で放った丸のセカンドゴロの間に入っている。前進守備を敷くタイガース内野陣にあってセカンドだけが深く守るシフトを見越した引っ張りのバッティングは、丸の意思の表れだ。丸がこう話していたことがある。
「僕の場合、体調よりもメンタルのほうからガクッときちゃうので……結果が出ないとき、取り返したい、ヒットを打ちたいと思ってしまいがちじゃないですか。でも、そうじゃなくて、どうせアウトになるんならアウトになる中での目標を立てるというか、そこだけちゃんとできていればアウトになってもいいじゃないかと割り切るようにしています」
道標を持つ選手は強い。
好不調の波が激しかった丸は、調子が悪くなると強く振りたい、結果が欲しいという欲が出てしまい、悪循環を招くことが少なくなかった。そんな丸が大切にしてきたのは、調子が上がらないときにはショートゴロを打てばいいという意識。よくない時期に強引なバッティングをせず、我慢することで状態が上向くのを待つ。実際、1号が出る直前の3連戦、丸にはショートゴロを含むセンター方向の打球が目立っていた。
「反対方向へ低く速い打球を打つ。そういう積み重ねの中で、自分のバランスに合ったやり方を見つけていくしかないんですよね」
結果が伴わないとき、何をすべきかの道標を見つけた選手は強い。そして丸は、それを持っている。