熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
ブラジル流“辛口”は期待の裏返し。
本田圭佑が特長を発揮するための策。
posted2020/07/10 07:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
ZUMA Press/AFLO
「本田はスイッチが切れていますね」(アナウンサー)
「ボールを受けても、無難に横へつないだり後ろへ戻すだけ。攻撃の組み立てに絡もうとしない」(解説者)
7月5日、リオ州選手権後期準決勝のフルミネンセ対ボタフォゴ戦。後半開始直後、本田が中盤の深い位置に佇み、CBから受けたパスをそのまま戻すのを見た地元テレビのアナウンサーと解説者のやり取りだ。
ブラジルのメディアは、スター選手であろうと容赦なく批判する。日本では「辛口」とされるセルジオ越後も、この国ではせいぜい中庸だろう。
無理もない。前半、相手ゴールから遠い位置に留まり、効果的な縦パスを繰り出したのは一度だけ。マークされるのではなくマークするのに忙しく、犯したファウルが3つ。攻撃面での貢献は乏しかった。
そして勝たなければ点を取らなければ敗退する状況でありながら、引き続き、腰が引けたプレーを続けていたのだから。
後半に見せた本田の積極性。
しかし後半途中から相手選手の高い位置からのプレスが弱まったこともあり、ようやく前を向いてプレーするようになる。
すると28分、決定機を演出した。
左SBの深い位置からのクロスが相手守備陣に跳ね返されると、ダイレクトで左足から鋭い縦パスを送り込む。受けたナザリオが右足で狙ったが、ゴールポストに弾かれた。
その5分後には、ナザリオが下がってきてボールを受けたのを見て、右サイドを猛然と駆け上がる。ロングパスが届く直前、DFにクリアされたが、この試合で初めて本田が相手ゴールへ迫った。
だがボタフォゴはトラップやパスのミスが多く、ゴールが遠い。結果はスコアレスドロー。大会規定により、グループステージの順位(フルミネンセはBグループ首位、ボタフォゴはAグループ2位)で優ったフルミネンセが決勝へ進んだ。
試合を通じた両チームの決定機の数は、3度ずつ。引き分けは妥当な結果だった。