熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
中島翔哉がポルトで迎えた大ピンチ。
タイトル直結の活躍で不評を覆せ。
posted2020/07/09 19:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Getty Images
「中島? 明日の試合と関係がない選手について話しても意味がない。今、私の頭は、リカ、マルコ・マティアス(注:ベレネンセスのFW)らをどう抑えるかで一杯だ」
ポルトガルリーグ第30節を控えた7月4日の記者会見。「数日前、クラブの練習場で個人トレーニングを始めた中島についてどう思うか」と聞かれたポルトのセルジオ・コンセイソン監督は、にべもなかった。
地元記者の1人は「このところ、監督に中島のことを聞くのは半ばタブーになっている。必ず機嫌が悪くなるんだ。中島が今季の残り試合でプレーするのは、相当に難しい。シーズン終了後、放出される可能性もある」と話す。
日本代表FW中島翔哉が、キャリア最大のピンチに直面している。
プレー内容が悪かったわけではないが。
昨年7月、アル・ドゥハイル(カタール)からポルトガルの名門ポルトへ移籍金1200万ユーロ(約14億5000万円。ただし所有権の50%)で入団。5年契約で、背番号10を与えられ、攻撃の中心となることを期待された。
コンセイソン監督が用いる主要フォーメーションは、4-4-2。2トップにはCFタイプを並べることが多く、基本的にトップ下のポジションはない。中島は、2列目左サイドをコロンビア代表FWルイス・ディアスと争うことになった。
ディアスは、パワフルでありながらスピードとテクニックを備え、決定力も高い23歳の左ウイングだ。8月下旬、中島が夫人の日本での出産に立ち会うため一時帰国したこともあり、今季序盤はディアスが先発し、中島は後半途中から出場することが多かった。
しかし、中島のプレー内容が特に悪かったわけではない。
ピッチに立てば、ライン間で巧みにパスを受け、決定的なスルーパスを通し、トリッキーなドリブルでサイドを突破する。チームメイトとの連携も次第に向上し、12月16日のリーグ第14節トンデラ戦にフル出場すると、3日後のポルトガル杯のサンタクララ戦で右からのクロスを体ごと押し込んで初得点。1月10日のリーグ第16節モレイレンセ戦まで5試合続けて先発し、チームも好調だった。
ところが、好事魔多し。モレイレンセ戦の後半に右足を打撲し、以後、6試合を欠場。掴みかけていたポジションを取り逃し、控えに逆戻りした。