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「スポーツとしての大食い」の魅力。
漫画でわかる意外な緻密さと奥深さ。 

text by

旨井旬一(マンガナイト)

旨井旬一(マンガナイト)Shunichi Umai

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photograph bySHIGERU TSUCHIYAMA/NIHONBUNGEISHA

posted2020/07/12 08:00

「スポーツとしての大食い」の魅力。漫画でわかる意外な緻密さと奥深さ。<Number Web> photograph by SHIGERU TSUCHIYAMA/NIHONBUNGEISHA

大食いはカジュアルなものから競技まで幅広く日本に定着している。

 今、大食いが密かなブームになっている。 

 YouTubeでも人気コンテンツとなり、フードファイターの木下ゆうかさんは、女性単独のYouTuberとして1位のチャンネル登録者数547万人を誇る(5月27日時点、専属契約のプレスリリースより)。

 YouTuberランキングサイト「yutura(ユーチュラ)」でも、木下さんは堂々の5位。「大食い」のタグが付いたチャンネルは69あり、そのうち40が登録者数1万人を超えている状況だ。

 大食いをスポーツとして世に知らしめたのは、1980年代に始まったテレビ東京の「全国大食い選手権」だった。その後継企画では、小林尊さんやジャイアント白田さん、ギャル曽根さんが全国的な人気者になった。

 そしてテレビ東京は4月から『デカ盛りハンター』の放送を開始した。

 文字通りデカ盛りをハント(狩り)するわけだが、4000冊以上のグルメマンガを蒐集してきた筆者には、「ハンター」というタイトルにある漫画キャラクターがリンクする。

 大食いのスポーツ化を目指してフードファイターが奮闘する『喰いしん坊!』(日本文芸社、著:土山しげる)に登場する、大食い賞金稼ぎ「ハンター錠二」その人だ。

 漫画の世界で大食いがどのように競技化・スポーツ化され、その内側でどんな駆け引きが行われてきたかを紹介したい。

プロフードファイターという肩書。

「ハンター錠二」はサングラスとカウボーイハットがトレードマークで、決して大柄でもなければ、それほど若くも見えない。 

 それでも科学的に裏付けられた知識と、大食い・早食いのどちらにも対応できる「二丁喰い」などのテクニック、そしてどんな状況にも屈しないメンタルを併せ持ち、無類の強さを発揮する。 

 錠二は名刺に「プロフードファイター」という肩書を使っている。大手商社の元会長・丹下孝之介が夢見る「大食いのスポーツ化」に賛同し、トラックドライバーを辞めてまで尽力する人物だ。

 ちなみに丹下会長は「決められた時間内に決められた量を食べる事 これすなわちルール!」(9巻P15)と掲げ、有望な人物に食材やコーチを充て、育成に努めるパトロンでもある。 

【次ページ】 邪道喰いと正道喰い。

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