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ゴルフ界の嘲笑をひっくり返した男。
デシャンボーは本当にわがままか? 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byAFLO

posted2020/07/10 10:00

ゴルフ界の嘲笑をひっくり返した男。デシャンボーは本当にわがままか?<Number Web> photograph by AFLO

「新しい考えというのは、まだ普及していないというだけの理由でいつも疑われ、たいてい反対される」とはジョン・ロックの名言である。

同じようにできないから、違う道を探す。

「僕は自分をアピールしたかったわけじゃない。みんなと同じようにはできないから、自分なりの道、人とは違う道を必死に探っただけなんだ」

 その努力と模索が人並み外れていたからこそ、人並み外れた独自性を有する人物、突出したプロゴルファーが生まれたということなのだろう。

 かつては同一レングスのアイアンの是非を巡って父親と意見が対立し、父子分断の危機にまで瀕したが、デシャンボーは常識とは異なる我が道を信じ続け、持論をサポートする材料として「科学的根拠」を主張した。

 2017年にジョンディア・クラシックで初優勝。その後はパットの不調に喘いだが、ユニークなパッティングスタイルを考案して戦い始め、「なんだあれ?」と笑われながら2018年メモリアル・トーナメントを制して2勝目を挙げた。その年、さらに2勝を挙げ、昨年はシュライナーズ・ホスピタル・フォー・チルドレンズ・オープンで通算5勝目をマークした。

「違う道が存在することをみんなに見せたかった」

 その間、「ピン位置を正しく知るために」という理由で試合中にコンパスを使用していることがルール違反に問われ、物議を醸した。スロープレーの元凶だと名指しされ、物議を醸した。

 コンパス使用に関してはルールブックに明記されていなかったが、あらためて違反と定義されたら、デシャンボーは素直に使用を止めた。スロープレーに関しては「僕は歩くスピードは誰より早い」と反論はしたものの、ペースアップに努め、いつしか彼がスロープレーヤーだとは感じないほどになっている。

 つまり、彼は「セルフィッシュ」ではない。非を認めず我を通そうとする輩でもない。

ただ、人とは違う道、自分なりの道を見つけながら生きようとしているだけ。かつて、そうしないと生きていけなかったら、そうすることが生きることだと信じ、実践しているだけなのだ。

「僕はセルフィッシュではない。その逆なんだ。この試合では、これまでとは違う体、違うパター、違う心構えで臨み、これまでとはまったく異なるスタイルのゴルフで勝つことができた。違う道が存在することをみんなに見せたかった。それができたことが僕は何より嬉しい」

 いろんな挑戦を次々にこなすデシャンボーは器用なゴルファーだと思われているのかもしれない。だが、彼は器用なようで、実を言えば、ちょっと不器用で、だから彼はしばしば「渦中の人」になる。

 しかし、彼は決して、セルフィッシュではない。

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ブライソン・デシャンボー

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