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ゴルフ界の嘲笑をひっくり返した男。
デシャンボーは本当にわがままか? 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byAFLO

posted2020/07/10 10:00

ゴルフ界の嘲笑をひっくり返した男。デシャンボーは本当にわがままか?<Number Web> photograph by AFLO

「新しい考えというのは、まだ普及していないというだけの理由でいつも疑われ、たいてい反対される」とはジョン・ロックの名言である。

変貌に米ツアー中が注目。

 ハイカロリーな食事を1日に6食以上も摂り、さらに補助食やサプリメントのドリンクも摂り、一生懸命に筋力増強とウエイトアップに取り組んできたというデシャンボー。

 なぜ、そんな行動に出たのか? これも「狂った科学者」ならではのチャレンジなのか? 目立ちたいだけ? またしてもお騒がせ?

 観客がおらず、話題といえば新型コロナにまつわる暗いニュースしかない米ツアーにおいて、デシャンボーの変貌は、それがいいのか悪いのかはさておき、大きな注目を集めた。

 そして彼は成績を出していった。再開初戦は3位タイ、2戦目のRBCヘリテージでは8位タイ、3戦目のトラベラーズ選手機では6位タイ。4戦目のロケット・モーゲージ・クラシックでは初日から好発進を切り、優勝戦線に加わった。

カメラマンに詰め寄って炎上。

「また、デシャンボーか?」

 SNSの世界が騒々しくなったのは、大会3日目のことだった。

 決め手のパットを何度か外し、フラストレーションを溜めていたデシャンボーの一挙一動をTV中継用のカメラマンが執拗に追いかけていた。

 そして、自身のバンカーショットに苛立ち、手にしていたサンドウエッジをバンカーの砂に叩きつけたデシャンボーは、そのときも自分に向けられ続けていたTVカメラにもっと苛立ち、カメラマンに詰め寄った。

「そこまでしつこく撮り続ける必要はあるのか?」

 ホールアウト後、米メディアからカメラマンとのやり取りや経緯を尋ねられたデシャンボーは、こう主張した。

「いくらTV中継用とはいえ、何から何まで撮影されるのでは選手のプライバシーが侵害され、ブランドイメージが損なわれる」

 この釈明が「火に油」となったことは言うまでもない。

「プロなんだからTVカメラに文句を言うなど、もってのほかだ」

「映されて困るような言動を取ることのほうが問題だ」

「また、デシャンボーのお騒がせか?」

 そんな批判や揶揄がデシャンボー本人の耳に入っていなかったはずはない。しかし、それでも彼は怯むことなく、躊躇うことなく、首位から3打差で迎える最終日を「アグレッシブに攻めるのみだ」と言い切った。

【次ページ】 米メディアはしぶしぶ褒めた。

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ブライソン・デシャンボー

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