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ゴルフ界の嘲笑をひっくり返した男。
デシャンボーは本当にわがままか?
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2020/07/10 10:00
「新しい考えというのは、まだ普及していないというだけの理由でいつも疑われ、たいてい反対される」とはジョン・ロックの名言である。
米メディアはしぶしぶ褒めた。
そして最終日。デシャンボーのゴルフは見事だった。「今週、月火水だけで8時間も練習した」というドライバーショットは、20ポンドも増強された肉体から打ち放たれるたびに、やっぱり360ヤード、いや370ヤード近くも飛んでいた。
アイアンショットの精度は高く、ショートゲーム、とりわけツアー休止中にさらに変えたというパッティングのスタイルも新しく持ち替えたパターも冴え渡っていた。
8メートルを沈めた16番、絶大なる飛距離を活かして2オンした17番、ロブウエッジでピン1メートルに付けた18番。上がり3ホールを連続バーディーで締め括り、2位に3打差を付けての逆転勝利は文句のつけようのない戦いぶりだった。
「イエスか、ノーかは、さておき、勝ったのだから、ともあれデシャンボーは自分が正しかったことを実証したということだ」
米メディアは渋々、そう書いていた。
「僕は劣等生で、いじめられっ子だった」
それにしても、まだ謎は解けていない。なぜ、デシャンボーは物議を醸すような言動ばかりを取るのかという謎は、いまなお残っている。
自己主張が強いから。我が強いから。そんな声が多々、聞こえてくる。
「みんなは僕のことをセルフィッシュ(自己中心的)なヤツだと思うかもしれない。でも、逆なんだ」
優勝後、そう言ったデシャンボーの言葉こそが、謎を解くカギである。
「僕は劣等生で、いじめられっ子だった」
いつだったか、デシャンボーはティーンエイジ時代を振り返り、そう明かしてくれた。勉強もスポーツもダメダメで、何をやるにも「僕はスローだった」。
周囲の子どもたちから嘲笑された日々の中、デシャンボーはひたすら考えたという。
「僕には何ができるのか。何か、みんなとは違うことはできないだろうか。みんなとは違う方法はないだろうか」
考えて考えて、努力して、模索して……その先に誕生したのが、勉強ができる秀才デシャンボーであり、米ツアーで戦うまでになったトッププロゴルファーのデシャンボーだったのだ。