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天下一武道会に闇のゲーム、リング。
漫画に学ぶ“新スポーツ”の発明法。
text by
山内康裕(マンガナイト)Yasuhiro Yamauchi
photograph by(c)Mitsutoshi Shimabukuro/Shueisha
posted2020/07/02 07:00
世界観を作るとは、ルールを作ることである。ルールという制約が人物や物語を輝かせるのだ。
「競技ごと作ってしまおう」
この「リング」という新競技を発明することになった経緯も、単行本に収録されている。島袋先生は「スポーツ漫画を描きたい」と考えたが、スポーツ漫画はすでに数多くあり、既存の種目を描いてもその道のプロに及ばないと思ったという。
そして調べていくうちに日本では知られていないスポーツが世界には無数にあることを知り、「なら競技ごと作ってしまおう」と考え始めたのだ。
まずはサッカーをベースに、バスケットボールやラグビーなどの要素を合成する。つまり、新しい種目と言っても、既存のスポーツを下敷きにしている。
タイトルにもなった「リング」を使うことは当初思いつかず、「ボール」のイメージがやはり強かったそうだ。しかしある時、フリスビーというアイデアからフラフープのような輪っかはどうかと思い浮かび、輪っかのサイズを小さくしてみたところ、股抜きやドリブル、パス、相手を抜くシーンが見えてきて「RING」誕生につながった。
天下一武道会も限定ジャンケンも発明だった。
漫画の世界では、過去にも多くの漫画家が想像力を駆使して競技や大会の形式を考え出してきた。
『ドラゴンボール』の天下一武道会や、『遊☆戯☆王』の初期に登場した闇のゲーム、『賭博黙示録カイジ』の限定ジャンケンなどが有名だ。
その中には限定ジャンケンのような“絶対にやりたくない”ものから、実際にプレーしたら楽しそうなものまで様々。闇のゲームはVRで実現したら人気になりそうだ。
漫画に限らず現実のスポーツでも、既存のスポーツや遊びの掛け合わせから生まれたものは多い。
卓球台をはさんで専用ボールをヘディングのみで打ち合う「へディス」や、バレーボールとバドミントンのルールをミックスして生まれた「ビーチバレーボール」もその一部だ。
スポーツ界では「日本人は既存のルールを攻略するのは得意でも、ルールそのものを創造するのは苦手」と言われることも多い。しかし、日本の漫画のバリエーションに富んだ競技たちを見ると、とてもそうは思えなくなってくる。