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天下一武道会に闇のゲーム、リング。
漫画に学ぶ“新スポーツ”の発明法。
text by
山内康裕(マンガナイト)Yasuhiro Yamauchi
photograph by(c)Mitsutoshi Shimabukuro/Shueisha
posted2020/07/02 07:00
世界観を作るとは、ルールを作ることである。ルールという制約が人物や物語を輝かせるのだ。
徹底的に作りこまれた架空のルール。
そして最大のポイントが、この漫画だけに登場する「リング」という創作スポーツの存在だ。作品を読んでいくと実際に「リング」をやってみたいと思うほど楽しそうで、なんなら「実はすでにどこかでやっているのではないか」と思わせるリアリティがある。それは、「リング」という競技の設定が徹底的に作りこまれているからだ。
作品内では、リング初心者の主人公・サマーと一緒にルールを学んでいくが、同時に単行本のおまけページには、どうやってこの競技が生まれたのか、創作の経緯が明らかにされている。ルールを簡単に説明しよう。
リングは、7人ずつの選手からなる2つのチームが1つのリングを奪い合い、相手のゴールに入れて得点を競う競技だ。選手の交代は何回でもOK。ただし、イエローカードを2枚もらって退場処分を受けた選手は、その試合中コートに入ることはできない。
競技時間は、前半と後半が30分ずつの合計60分で、インターバルは10分。上半身ならどの部分を使ってもいいが、腕や首、胴体をリングの中に通すのは禁止されている。
ファールやフリースロー、リングの投げ方といった内容もきちんと設定されていて、「こういう場合にはどうなるんだろう」という疑問も、作品の中で解決される。
ルールが戦術を生む。
例えば、「リングを2人以上が持ってはいけない」というルールがある。
「リングは敵味方に関係なく、2人以上で触れることはできない。触れている時間は3秒まで。そのため、味方同士の場合は、どちらかが手を離さなければ反則になり、敵の場合は最初に触っていた選手が手を離さなくてはいけない」
そのため、リングを持っている人は敵に触られないように敵地に運ぶ必要がある。そこでどういった戦術がセオリーになるか、どんな奇策がありうるかを考える楽しみがあり、さらにその予想を上回る展開が繰り広げられる。