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「ミスありき」で社会が回るドイツ。
サッカーにも繋がる自立性と考え方。 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/06/25 19:00

「ミスありき」で社会が回るドイツ。サッカーにも繋がる自立性と考え方。<Number Web> photograph by Getty Images

近年、育成年代でも存在感を見せるドイツ代表。社会全体の在り方を見ても興味深い点がある。

U13チームの監督をしていた頃に。

 前置きが長くなったがライター、サッカー指導者として生活する中で、そう感じる出来事がたびたびある。

 まずドイツに来たばかりの20代半ば、指導していたチームでのことだ。

 当時、僕はU13チームの監督をしていて、練習も試合も全部1人で見ていた。大変ながらも何とかなっていると思っていたし、ドイツ語力がそこまでのレベルでなく、誰かに助けを求めるのが苦手という性格もあった。

 その中で普段は、試合日は選手の親御さんに車での送迎をお願いし、グラウンドへ向かっていた。ただある日、配車の返事が全然来ないことがあった。前日段階で車を出せる親御さんが1人のみ。今なら改めてメッセージを書くか、直接電話してお願いするところだが、当時は催促するのに気後れして、ボールやユニホームなどの用具と選手数人を親御さんの車で送ってもらい、残りの選手は電車で向かうことにした。

 ただ、それが大きなミスだった。

 地図では駅からグラウンドまで大した距離ではないと思ったのだが、実際はかなり遠かった。このままだと試合開始には間に合わないし、着けるかどうかすら怪しい……。結局、車を出してくれたお父さんが電話で事情を把握して、駅とグラウンドを何往復かしてくれた。結果的になんとかなったが、僕は自己嫌悪に陥った。

 無事にグラウンドに着き、子どもたちが控室で着替えている間、僕はそのお父さんと2人で話をした。

「キチ、今度から大変なことがあったら“大変だ”と教えてくれ。そうすれば、助けることができる。でも言ってもらわないと、助けることもできない。僕も他の両親も、いつでも助ける準備はできているつもりだよ」

「ありがとう。そして今日は本当にごめん。子どもたちにも悪いことをしてしまった」

「それは気にしなくていい。ミスをすることは誰にでもある。それは人間的だ。そこから大事なことを学んでくれたらいいんだよ」

相談するとスタッフが増えた。

『Das ist menschlich』=それは人間的だ。

 この言葉を聞いたとき、すごく腑に落ちて、救われた気がした。

 それまでは、1人でなんでもかんでも背負い込んでやるのが“頑張ること”と思い込んでいた節がある。でも、それは自己満足に過ぎないことが多い。役割分担をして、それぞれがやりやすい環境を整備するのはどんな分野でも大切だ。

 その後、僕はクラブに相談してスタッフを1人加えてもらえることになった。

 ミスをするのが「人間的」だとして、実際に問題が起きたとき、どう対処したらいいのか。何が100点満点の正解かは、各社会における考え方や関わり方で変わるだろうし、そもそもその問題において、100点の答えを導き出す必要があるのかも考えなければならないのだ。

【次ページ】 小学校で起きた、ある先生の話。

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