“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
大学4年生の進路、Jリーグか就職か。
アピールの場が減る今、何を考える?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2020/06/24 20:00
進路を「プロ1本」と明言してきた筑波大主将・知久航介。現状から目を逸らさず、教員免許取得にも動き出した。
主将・知久「現状から目を逸らさずに」
國學院久我山高時代に選手権準優勝を経験し、現在は筑波大蹴球部のキャプテンを務める技巧派MF知久航介は、進路を「プロ1本」に絞っている。一方で、教員免許は取得すると決めた。その理由は何か。
「一番はプロになる。正直、それ以外は考えていないのが本音です。とはいえ、この状況は自分たちでどうにかなる話ではありません。その事実から目を逸らさずに、やれることはやろうという考えを持っています。一方で教育実習は秋以降と、リーグ戦最中になってしまいますが、将来のことを考えて実習をこなして教員免許はきちんと取りたい。その時期はサッカーに打ち込めない分、それ以外はとにかくサッカー第一でやります」
年明けの1、2月まで粘ってもオファーが一切ない場合はどうするのか。
「今はサッカー100、サッカー以外の就職は0ですが、(来年の)1月以降はフィフティーフィフティーになると思います。その時にどうするかも今のうちから考えないといけません」
小井土監督が言うように、プロサッカー選手はなりたくてなれるものではなく、他者の評価で決まる。それゆえに先行きは一切分からない。不透明な展望でもチャレンジすることを否定はしないが、この未曾有の状況だからこそ叶わなかったときの「プランB」は必ず持っておかないといけないだろう。
窪田にとってのプランBは一般企業の内定、知久にとっては教員免許取得と、リアリティある選択肢を持つことが彼らはできている。
「3つとも保険ではなく、目標」
来月の教員採用試験を受けるという4年・増渕利樹は、「今の現実的な選択肢は3つある」と語る。
「1つ目はプロ。2つ目は栃木県の教員採用試験を受けて教師になる。3つ目は教員免許を取得して非常勤講師になり、その上で社会人リーグでサッカーを続ける。3つとも保険ではなく、どれも自分のなりたい目標なんです」
栃木県出身の増渕は、卒業後は地元に帰る選択肢を持っているという。理想は学生時代を下部組織で過ごした“古巣”のJ2・栃木SCに入ることだが、「もちろん、Jリーグであれば地域は問わない」。だが、それが叶わなかった場合を想定し、まずは7月の栃木県の教員採用試験を受けるのだという。万が一、そこが不合格でも10月末の教育実習をこなすことで教員免許を取得するプランだ。
「Jリーガーになりたいという気持ちは強いし、一切それは消えていません。でも、今はサッカーの方に多くの時間を割きたいですが、思うように割くことができない状況にあるからこそ、そこで何もアクションを起こさないのは違うと思いました。自分の将来と本気で向き合って考えたときに、プロサッカー選手になりたい、教員になりたいという2つがあって、さらにプロサッカー選手を目指しながら非常勤、プロサッカー選手を辞めてから教員という選択肢も出てきた。なので、どれも対応できるように、今やるべきことはきちんと採用試験に挑み、さらには教員免許を取るということでした。
ただ、本当だったらもう教育実習を終えていて、そこで自分の教員としての資質や思いを確認できたら、どの選択肢をとるかの大きな指標になったのですが、今年は教育実習が教員試験の合否が出た後になってしまった。そこは正直不安ですが、その先の選択肢の質をさらに上げていくために必要なこととしてポジティブに捉えています。毎日、プロになるためにサッカーに打ち込みながらも、勉強を欠かさずしています」
悲観することはいくらでもできる。しかし、そこで立ち止まっていたらより自分が不利の立場に追いやられてしまう。だからこそ、自分の置かれた厳しい立場を受け入れ、打開策を練る。