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久保建英の現在地を中西哲生が解説。
譲られたFKが示す絶大な信頼感。
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2020/06/16 11:50
力に差があるチーム同士の戦いでも個人の能力を発揮できたのは、久保建英が高いレベルにいることの証明である。
普通なら冷静さを失ってもおかしくない。
スタメンに選ばれないのは、選手にとってネガティブな状況です。ましてや先発に定着したタイミングがあったのなら、冷静さを失ってもおかしくない。
一方で、選手起用は監督の専権事項です。選手からすると「自分の力が及ばない領域」であり、それならば、「なぜ先発で使ってくれないのか」と不満を抱くよりも、「どうすれば自分は出られるのか」にフォーカスしたほうがいい。
果たして、今シーズンの久保はつねにポジティブ思考です。先発で使われない局面でも、つねに自分と真正面から向き合ってきました。
それも当然かもしれません。
小学生でバルサのカンテラに入り、帰国後はFC東京の下部組織からトップチームでプレーし、横浜F・マリノスへの期限付き移籍も経験した。クラブと並行して様々なカテゴリーの日本代表にも招集されてきた。
6月4日に19歳になったばかりですが、すでに相当数の監督のもとでプレーしてきたわけです。スタメンで起用されない経験もしてきた。そうした日々を過ごすことで、「いま自分が置かれている立場で、監督から何を求められているのか」を、客観的に分析する能力が身についていったのだと思います。
今回の久保と同じ立場になったら……。
新型コロナウイルスの感染拡大による中断前は、3試合連続で先発していました。中断前最後のエイバル戦では、リーグ3点目も決めていた。
調子が上向いてきたなかで中断された悔しさがあり、ようやく迎えた再開初戦がバルサ戦です。彼にとっては気持ちのたかぶる要素が重なっていたのですが、感情を波立たせることはないのです。
バルサ相手だからという気負いを感じさせず、久保は現時点の自分を素直に表現していました。申し分のない精神状態で試合に入り、そのままのメンタルで最後までプレーしたことを、まずは評価するべきでしょう。