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コロナ禍のなか繋がったコーチの輪。
ウェビナーで世界のバスケを学ぶ。
text by
永塚和志Kaz Nagatsuka
photograph by(c)Get Better Now Zoom Seminar 2020
posted2020/06/08 11:00
講義を行うデイビッド・ブラット氏(右上)と、Gリーグのテキサス・レジェンズ(NBAダラス・マーベリックス傘下)でACを務める伊藤拓摩氏(下)、東頭俊典HC(左上)。
多少の遠出でも、クリニックに参加。
「コーチたちが対話できる場を始めたかったんだ」
アメリカ出身で、ドイツリーグでの指導者経験もあるベック氏は当時、そう語っていた。
このクリニックの講師はベック氏だけではなく、例えば、当時は三菱ダイヤモンドドルフィンズ(現・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)のHCだった上述のラング氏や、JX-ENEOSサンフラワーズでACだったトム・ホーバス氏(現・日本女子代表HC)らも担っていた。
多少の遠出となってでも、クリニックに参加していたコーチたちもいた。
当時、岩手ビッグブルズのHCだった桶谷大氏(現・仙田89ERSで同職)は、長野での試合が終わって岩手へ戻るチームバスには乗らずに東京へ立ち寄り、同クリニックに出席したことがあった。それほどまでに、魅力的なイベントだったのだ。
「我々が教えるのは哲学やコンセプト」
ラング氏はNBAユタ・ジャズでAC職を得て日本を離れてからも、毎夏、日本で“アントニオ・ラング Crossing The Border”というクリニック、セミナーを開催している。この運営を、同氏と旧知の東頭氏らが行ってきた。
筆者も取材でその都度、ラング氏に話を聞いてきたが、彼がいつも言うのは日本のコーチに「こういうやりかたもあるんだよ」と他の選択肢を示しているということだ。
「我々が教えるのは哲学やコンセプトで、こちらが何かを失ってしまうわけではない。誰もがオリジナルなアイディアなどを持っているわけではない。誰かからアイディアを得て、そこから学んで今があるはずなんだ」
チームなどによって事情は違うから、どんなコーチングが正解かと答えを求めるのは無理だ。得たものをどう料理するかはそのコーチ次第で、こういったクリニック等はあくまでヒント、選択肢を学びに行く場なのだ。