ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
「ハセが契約更新してくれて嬉しい」
長谷部誠、36歳で託された新任務。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/06/05 11:40
無観客試合での開催が続くブンデスリーガ。契約延長が発表された長谷部誠はどんなプレーぶりを見せてくれるだろうか。
読みだけでなく、体も張れる。
長谷部の凄みは、ハイレベルな攻撃能力を備えながら、フィジカルもスピードもトップレベルのブンデスリーガで「最後尾守備者」の責任もまっとうしている点です。
とかく彼の守備は相手の動きを予測した「読み」が武器だと称されます。その評価はある意味では合っていると思いますが、一方で彼は最終局面でのバトルにもまったく躊躇しません。
時に「ツバイカンプフ(1対1)」で相手に劣ることもありますが、その後のリカバーをも含めたディフェンス力はドイツのメディアでも高く評価されており、いわゆる「ひ弱」な印象は抱かれてはいません。
そんな長谷部のプレースキルとポテンシャルを考慮すれば、ヒュッター監督は長谷部をリベロで起用しない限り3バックは機能しない、と踏んでいるのかもしれません。実際、ヒュッター監督はウィンターブレイク明けにライプツィヒから獲得したシュテファン・イルザンカーをリベロで起用しましたが、試合内容は伴いませんでした。
イルザンカーは4-1-2-3を採用した際のアンカーとして起用されることもありますが、攻守ともに実効性が低く、長谷部がアンカーで起用されることもありました。
監督はコンディション面を懸念か。
ヒュッター監督が長谷部起用を逡巡する理由は、コンディションに起因しているのではないでしょうか。アイントラハトは昨季と今季の2シーズンで、リーガ、DFBポカール、ヨーロッパリーグの3タイトルに参戦して、週2試合のゲームを数多くこなしています。
その影響で多くの選手がシーズン半ばを過ぎてからコンディション低下に悩まされて、実際シーズン終盤はチーム成績を落とす傾向にあります。ましてや今年36歳の長谷部にとってコンディション維持は非常に困難なタスクです。
ちなみに今季ブンデスリーガ1部の最年長はクラウディオ・ピサーロ(ブレーメン)の41歳8カ月、続いてオリバー・フィンク(デュッセルドルフ)の37歳11カ月、そして、シュテファン・リヒトシュターナー(アウクスブルク)が長谷部よりも2日早い生まれの34歳4カ月で、長谷部は4位にランクインしています。
かねてから膝の負傷にも悩まされてきた長谷部は、それでも試合に出ればハイレベルなプレーを実行します。彼のプレーパフォーマンスを常時高めているカギは、適度な休養によるコンディション維持。これに尽きるのではないかと思うのです。