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「ハセが契約更新してくれて嬉しい」
長谷部誠、36歳で託された新任務。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/06/05 11:40
無観客試合での開催が続くブンデスリーガ。契約延長が発表された長谷部誠はどんなプレーぶりを見せてくれるだろうか。
新たな「8番」的なリベロに?
ただ、アイントラハトの3-4-1-2、もしくは3-4-2-1システムで長谷部が担う役割や影響力が甚大な点は考慮しなければなりません。3バックにおけるポジションはセンター、すなわちリベロですが、このポジションにおける彼のプレータスクは最終局面での防波堤というディフェンス面とともに、攻守転換時の攻撃起点にも及びます。
長谷部はこれまで浦和レッズ、ブンデスリーガのヴォルフスブルク、ニュルンベルク、そして現在のアイントラハトにおいて様々なポジションでプレーしてきました。
浦和時代のトップ下、ボランチを皮切りに、ヴォルフスブルクではサイド、サイドバック、そしてチームの有事に数分間だけGKも務め、アイントラハトでは主に「ゼクサー」(ドイツ語で背番号6。守備的MFを指す)を任されましたが、監督を務めていたニコ・コバチ監督にリベロへとコンバートされたことで、その潜在能力が覚醒した感があります。
様々なポジションでプレーした経験が今の長谷部を支えているのは間違いありません。そのうえで、今の「リベロ・長谷部」のチーム内での役割をドイツ流の背番号で表すと「アハター」(背番号8)になるのではないかと思います。
「8番」は、攻守両面で貢献を果たす選手と捉えられます。長谷部のリベロでのプレーはまさしく攻守両面に関わるもので、この概念と一致します。
相手守備網が緩いエリアにボールを。
3バック採用時のアイントラハトは長谷部を最後尾に配し、両脇のストッパーがサイドライン際まで開きつつ、2人のセントラルミッドフィールダー(CMF)と長谷部が逆三角形のポジショニングを取ります。
この際、味方CMFは大抵中盤で相手選手のプレッシャーを受けるため、攻撃展開を図る際にはあえて相手を自らに引きつけたうえで後方の長谷部へボールを渡す選択が多くなります。
そこで長谷部の卓越したスキルが発動します。彼は現状のアイントラハトのストロングアタックと言えるサイドエリアへ視野を広げて、最前線の味方FWの動きや味方MF、DFのポジションも把握します。
そのうえで、相手守備網が最も緩いエリアへボールを入れ込み攻撃を活性化させるのです。長谷部としては相手プレッシャーから外れる利点を得られる後方コンダクトで技術力を発揮し、チームの攻撃を回転させていくのです。