月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
「入口より出口が大事」なコロナ禍で
ようやく見えてきた佐々木朗希の姿。
posted2020/05/31 08:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Kyodo News
『プロ野球 7・10にも球場で生観戦できる』(サンスポ5月26日)
政府が緊急事態宣言の全面解除をした翌日の一面だ。解放感があるなぁ。
開幕は「6月19日」で「無観客」だが、政府の基本的対処をもとにすれば、早ければ「7月10日」にも観客を入れて実施する可能性が出てきた。そちらの数字を一面にもってくるあたり、スポーツ紙らしい待望感が爆発している。
ようやくここまで来たかという感じだが、しかし一貫して「入口より出口が大事」と慎重な態度で書き続けていたコラムがあった。
デイリースポーツの「元トラ番キャップ・吉田風の取材ノート2020」である。たとえば5月10日は「まだ、何も終わってない」。
《利己的に書くならば、明日にでもプロ野球は開幕すべしだ。なぜなら、デイリースポーツの売り上げにとって、延(ひ)いては、当方と家族の生活にとっても、これ以上の朗報はないからである。》
身に迫る事情を率直に書きつつ、しかし勝負事は決着がつくまで勝ち負けは判断できないと訴える。
ドーハのラモス、'08年の岡田監督。
その例が豊かなのだ。まず1993年、サッカーW杯初出場へ日本代表があと1勝とした夜。
《これでいける!絶対いける!インタビューで涙ぐむカズを見て大方がそう思った。カズの背後を不機嫌そうに通り過ぎるラモス瑠偉の背中を少し気にしながら……。「まだ何も終わってないよ!」》
あの「ドーハの悲劇」である。さらに記者としての体験例で「2008年」を挙げる。
《7月にマジックを点灯させた阪神が最大13差を逆転され巨人にメークレジェンドを許した悪夢。》
ああ、スポーツで例えるとまだまだ油断できないことがわかる。
ちなみに'08年当時の阪神・岡田彰布監督は《浮かれる周囲に「アホか…」と漏らし、「危ないよ」と兜の緒をきつく締めていた》という。つまり「ドーハのラモス」だった。
緊急事態宣言が全面解除後も、
《この間(かん)当欄は慎重論を絶やさず書いてきた。その理由に他意はなく、入り口より出口が大事だと考えるからである。》(5月26日)
新型コロナウイルスで誰もが大変という並走感をこのコラムで得ることができた。