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ラクロス協会が3日で1000万円調達!
スポーツ団体の危機を救う方法とは?
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byJapan Lacrosse Association
posted2020/05/29 07:00
大学生が主たるプレーヤーのラクロス界にとって、新勧の時期に新型コロナウイルスが蔓延したのは不運だった
「“ラクロス人”の力を1つに」
新入生の勧誘活動は、競技の将来にも関わることである。
現在の競技人口1万8000人(会員数)の約8割を占めるのは大学生。日本ラクロス協会における収益の半分以上は会員登録費となっており、新入生の入部数が減ることは、今後、大きな影響を及ぼしかねないという背景もあった。
「新入生が新しい部活を選ぶとき、ラクロスが第一選択肢になることは少ないです。そこは野球、サッカー、ラグビーとは違います。勧誘活動ができないのは危機的な状況。私も含めて大学ラクロスの経験者であれば、その深刻さが分かると思います」
クラウドファンディングを選択したのは、PR費用の捻出だけが理由ではない。安西氏は言葉に力を込める。
「日本のラクロスコミュニティーを刺激したかったんです。“ラクロス人”の力を1つにして、ラクロスの未来を守ろうって。一致団結したかった」
あっという間に設定ゴールを次々と達成。
舞台裏では地道な営業もした。
スタート前には火付け役を担ってくれそうな太い支援者の候補をリストアップし、個別にアプローチ。これもまた大成功につながった仕掛けの1つである。反響は大きかった。
4月17日に開始して2時間で第1目標の200万円に到達し、9時間でネクストゴールに設定した500万円を突破。3日後には第3ゴールと定めた1000万円の大台に乗せる。
支援者は資金を入れた完了画面をスクリーンショットに撮り、SNSに次々とアップ。「僕も私も」と厚意の連鎖は止まらず、『READYFOR』のWEB上で提示される応援コメントは20日間ほどで730通以上も集まった。4月27日には支援募集を打ち切る異例のメッセージを出している。当初の想定以上の資金を集めたことに加え、ある狙いもあった。
「ラクロスコミュニティーの力をすべて刈り取ると、あとのエネルギーが残らなくなります。もっと支援したかったのに、という物足りなさがあったほうがいい。今後、日本のラクロスがピンチになるときがあるかもしれませんし、そのときに取っておいてもらいたい」