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デアリングタクトの究極の瞬発力。
オークス制覇の陰にサンデーの血?
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2020/05/25 11:40
着差以上の力の差を見せて無敗でオークスを制したデアリングタクト。今年の3歳馬はレベルが高い。
松山騎手「本当にすごい脚」
デアリングタクトは後方の内につけたまま3、4コーナーを回り、直線へ。
先頭との差は7馬身ほどある。前が壁になっており、外も他馬に塞がれている。
ラスト400m地点。松山は、前を行くマルターズディオサの外のスペースを狙ったが、そこが狭くなりそうな気配を察すると、すぐさま内に進路を切り換えた。同じスペースを、マジックキャッスルの浜中俊も狙っていた。が、デアリングタクトがわずかに前に出ていたぶん、先に通ることができた。
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ラスト200m手前で、デアリングタクトの前方がクリアになった。
「本当にすごい脚を使う馬なので、開いたところを行こうと思っていました。馬に助けてもらいました。馬には『ありがとう』と言いたいです」と松山。
デアリングタクトは、手前を2度ほど替えながら鋭く伸び、先に抜け出していた内の2頭をかわし、無敗の二冠制覇を達成した。
無敗は63年ぶり、4戦目は最少タイ。
1、2コーナーで他馬に押し込まれて位置取りが悪くなり、道中は掛かりそうなところをギリギリで我慢。直線入口では進路を切り換えることになったが、それでもメンバー最速の上がり3ハロン33秒1の末脚を繰り出した。厳しいマークを、「アーモンドアイ級」と言っても大げさではない力で振り切った。
その強さを信じ、序盤で無理にポジションを取りに行こうとせず、迷わず溜めた松山の判断が、究極の瞬発力を引き出したのだろう。
デアリングタクトは、2018年のアーモンドアイ以来2年ぶり15頭目の「牝馬クラシック二冠馬」となった。「無敗の牝馬クラシック二冠馬」の誕生は、8戦8勝でオークスを制した1957年のミスオンワード以来、63年ぶり2頭目。オークスが春に行われるようになった’53年以降、デビュー4戦目での制覇は、’06年カワカミプリンセス、’19年ラヴズオンリーユーに並ぶ最少タイ記録だ。