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プロレスは市民に必要不可欠か?
フロリダ州知事の特別許可で論争。
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/05/05 11:00
4月上旬に無観客試合、インターネット配信イベントとして開催された「レッスルマニア」で、アンダーテイカーに生き埋めにされたAJスタイルズ。
あらゆるスポーツイベントが休止の今。
禁止と自粛要請などの違いこそあれ、日本でプロレスがこのフロリダ州のように、社会的に特別な扱いを受けることはまずないのではないか。
経済的規模が違うのもそうだが、日本ではスポーツ・エンターテインメントはそういう社会的な評価を与えられにくいという気がする。当然ながら、観客を入れての開催となると、プロ野球、Jリーグ、大相撲なども含めて日本でも当分の間は難しいだろう。
国際サッカー連盟FIFAはワールドカップ予選を含む年内の公式戦の延期を示唆している。オランダ政府は、無観客を含むすべてのスポーツイベントを8月末まで禁止したことで、オランダ・リーグは早々と打ち切られた。フランス・リーグも今シーズンの中止を決めた。サッカーの母国、イングランド・プレミアリーグはウェンブリーなどの特定のスタジアムで、無観客を条件に残り試合の消化を模索している。そこに、例外的な扱いはない。
なんとか新たな一歩を踏み出したいが……。
4月15日、日本のプロレスの各団体が集まって、元プロレスラーの馳浩衆議院議員にレスラーの休業補償などを含めた要望書を手渡したが、これから先は容易ではない。
全日本プロレスは4月6日に、新木場1stRINGで無観客のインターネット配信による「What we can do now」をテーマに開催して以来、休止状態だったが、4月30日から収録試合の配信を始めた。ノアもいち早くインターネット配信用の試合の収録を行ってきたが、他団体は再開のメドがたっていない。新日本プロレスとなると、もう2カ月以上も試合を行っていないのである。
日本全国に広げられた非常事態宣言は延長を余儀なくされた。それでも、感染の波は何度かにわたってやって来るであろうから、通常生活を続けているスウェーデンのように割り切らない限り、少なくても夏までは観客を入れての興行という形態をとることは難しいだろう。
各団体はタイミングをみて、まずは無観客試合開催に踏み切らざるを得ない。
最優先される健康と生命を考えるなら、何もしないのが一番だというのはわかっている。
コロナと長く付き合わざるを得ないならば、知恵を絞って、どこかで一歩を踏み出さなければ他の企業と同じように、プロレス団体も機能しなくなる。
待つことが可能な時間はそんなに長く残されてはいない。