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旗揚げ戦に鈴木みのるも参戦!
配信特化プロレス『チョコプロ』とは?
posted2020/04/30 20:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
(C)Chocopro
チョコレートプロレス、略してチョコプロは3月28日にスタートしたばかりの新団体である。
創設者は女子団体『我闘雲舞(ガトームーブ)』の代表さくらえみ。同団体の常設会場である市ヶ谷チョコレート広場を舞台に、試合はYouTubeで配信される。観客を入れての“興行”というスタイルは最初から取っていない。
いわゆる無観客試合だが、さくら曰く「いえ、お客さんはいるんです。カメラの向こうに」。会場に選手とスタッフしかいないのは「チョコプロとしてはそれが通常の状態」だからだ。
「チョコプロは“大会の中継”ではなく“中継のための大会”なんですよ。舞台と映画の違いに近いかもしれないです」
確かに、舞台演劇の中継と映画はまったく違うものだ。映画のことを、わざわざ“無観客演劇”と言ったりはしない。チョコプロも同じ。ただ試合を流すのではなく“カメラに向けた表現”が徹底されているから新鮮で刺激的だ。試合にカメラマンが巻き込まれて“POV(主観映像)アクション”のようになることもある。
我闘雲舞の無観客配信バージョンではなく、配信特化型の新しいフォーマット。それに必要なものだから、別の団体名をつけた。そこには「新しいものが誕生するワクワク感」も込められているとさくら。
プロレスの「キラキラした部分」を求めて。
彼女はキャリアの大半を“新しいもの”作りに費やしてきた。小学生レスラーをデビューさせて波紋を呼んだこともある。その1人が、昨年アメリカの新興メジャー団体AEWの初代女子王者となった里歩だ。
アイスリボン時代はプロレスを題材にした映画のキャストを本物の選手に育て、またチョコプロの先駆けとも言えるUSTREAM配信団体『19時女子プロレス』を旗揚げ。我闘雲舞はもともとタイをベースに活動し、タイ人レスラーを輩出した。近年は「誰でも女子プロレス」(ダレジョ)を設立している。これはプロレスの技を学ぶ女性向け練習会。ここからデビューした選手もいるのだが、あくまで目的は体を動かすことであってレスラーになることではない。だから観客を入れてのダレジョのイベントは試合ではなく「練習を見せるショー」(さくら)として開催された。
次々と新しいアイディアを打ち出すさくらは「なんとかプロレス界で生き残っていこうと思ってやってきただけなんです」と言う。そのためなら形式にはこだわらない。
「その中でも特にキラキラした部分を残していきたい。歌やダンスの世界、他のスポーツ、いろんなジャンルに、何かを表現して輝きたいという女の子がいて、プロレスももちろんそうです。今も17歳だった時の自分、輝きたかったプロレス少女が私の中にいます」