プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
プロレスは市民に必要不可欠か?
フロリダ州知事の特別許可で論争。
posted2020/05/05 11:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
フロリダ州が下したWWEへの「特別な扱い」が全米で議論になった。
フロリダ州政府が、同州オーランドにパフォーマンスセンターを有する世界最大のプロレス団体WWEを「Essential Business=公益に欠かせない重要なビジネス」と位置付けたのである。
これは、新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威の中、市民生活に必需の食料品店や医療施設に次ぐ3つ目のカテゴリーに入るもので、それには全国的なプロスポーツ・エンターテインメントも含まれて、WWEもその恩恵を受けることになったのだ。
WWEは4月4日、5日とパフォーマンスセンターから無観客で「レッスルマニア36」を2日間に渡って世界中に生配信した。
ど派手な演出、アンダーテイカーとAJスタイルズのブルドーザーまで繰り出した「墓穴生き埋めマッチ」は映画のアクションシーンを見ているようだった。
ジョン・シナとブレイ・ワイアットがしゃべり続ける肉体的な接触のほとんどない時空を超えた30分に及ぶ心理戦は、微妙なところまで英語をちゃんと理解できないと、文化の違いもあるので退屈なものにも映ったかもしれないが――。
プロレス興行は市民生活に必要不可欠!?
WWEはフロリダ州が4月9日に出した決定(これは13日まで市民には公表されなかった)の後、金曜日の「SmackDown」と月曜日の「Raw」のライブ配信を再開した。もちろん、無観客という条件付きで、WWEの持ち物であるパフォーマンスセンターからの中継ではあるけれども。
WWEは「SmackDown」を放送するFOXと年間約2億ドル、5年契約で約10億ドル(約1080億円)、「Raw」を放送するUSA Networkとも年間約2億6000万ドルで5年契約がある。
とはいえ、NBA、MLB、PGA、NCAAといったすべてのスポーツイベントが中止あるいは開催をストップしている今、なぜWWEだけが? という疑問は当然だろう。
フロリダ州知事のロン・デサンティスは「人々はコンテンツを欲しがっている。3月からコンテンツは極端に減っているから」と語っている。
外出禁止令が出される中、人々が家で楽しめるコンテンツとしてWWEを必要不可欠なものにエントリーしたという理由づけである。ちょうど、新型コロナの感染者がフロリダではピークを迎えると予想されていた時期だった。