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サッカーは危機管理の知恵が満載だ。
「社会的なポジショナルプレー」を。 

text by

田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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posted2020/05/03 11:50

サッカーは危機管理の知恵が満載だ。「社会的なポジショナルプレー」を。<Number Web> photograph by AFLO

人間とスペースについての考え方、そして未知なる戦いの勝ち方がポジショナルプレーには詰まっている。

支援、準備、理解の3要素。

 その前提条件となるのが、ペップが言うところの「正しいポジショニング(選手同士の理想的な距離と位置、アングルの確保)」に他ならないが、さらに突き詰めて考えていくと、ポジショナルプレーという発想は、次の3要素に還元することもできる。

A:Support (支援):有形無形のリソースの最適配分によるオプションの確保
B:Preparation (準備):的確な状況判断と合理的な予測による、セカンドプランの確保
C:Understanding(理解):正しい知識と目的意識、そして手段、役割/責任分担の確保

 これらの要素は、企業や社会、組織のロジックを成功に導くためのエッセンスとなんら変わらない。再びサッカーの試合に寄せて言うなら、下記に挙げるようなゲームマネージメントのノウハウはさまざまな危機管理にも援用できる。

 たとえば、未曾有の感染症に対してもだ。

1:チーム全体として最適なポジショニングを徹底する
(スモールスペースで数的優位を作るのも有効だが、これは時と場合による。むしろ局面で数的優位を作らないことが、チーム全体を機能させるためにプラスに働くことも多い)

2:戦況を冷静に把握し、優先順位(プライオリティ)を決めていく
(自分たちは優位に立っているのか、守勢に回っているのかを見極める。今、最優先でサポートすべき選手や、守るべきエリアはどこかという優先順位も全員で共有しておきたい)

3:チーム全体として命令系統や責任・役割分担を明確にする
(指揮系統が混乱していては強豪相手に勝つことはできない。チーム全体としての目標や、相手を攻略する具体的な戦術、個々の責任・役割分担をはっきりさせておくのは不可欠だ)

4:個のレベルでも、日頃からスキルやノウハウを磨き続ける
(チームプレーに徹するのは大前提だが、個のレベルでできることもかなりある。相手の攻撃を効果的に防ぐための細かなスキルやノウハウ、テクニックを研究するのも役に立つ)

5:万が一の場合に備えて、常にオプションを確保しておく
(慎重を期していても、思わぬ形で負傷や欠場に追い込まれる危険性は誰にでもある。万が一に備えてオプションを用意しておくことは、精神的・時間的な余裕にもつながる)

6:ゲームプランが崩れた時には、すぐに発想を切り替える
(当初のプランで押し切れるに越したことはないが、予想外の展開になった時には、チーム全体でいかに優先順位と目的、そして方法をすばやく切り替えられるかが明暗を分ける)

7:ゼロリスクでなく、リスクマネージメントの視点で考える
(一定の時間帯だけ100%集中しても、その時間帯が終わった途端に集中力が切れてしまうのでは逆効果。試合全体を見据えた上で、効果的なリスクマネージメントをしていきたい)

8:新たな攻略方法のヒントや最新情報をチェックし続ける
(戦況は常に変化し続けている。眼前の試合に集中しつつ、相手を攻略するための新たなヒントを探したり、他会場の試合をチェックして最新情報を入手したりするのも大切だ)

9: スタミナ切れを起こさないように、心と体の栄養を補給する
(長丁場の戦いでは心と体のスタミナを切らさないことが大切。食生活の管理や適度なエクササイズでコンディションを維持し、安全な形で気分転換やリフレッシュを図りたい)

10:サポートスタッフや裏方さんへの感謝の気持ちを忘れない
(最前線で敵の突破口を探す攻撃陣、水を運ぶ中盤、体を張ってゴールを守る守備陣がいればこそ戦いは成立する。無数のチームスタッフや裏方さん、仲間や家族にも感謝の気持ちを)

11: 図太く、打たれ強く、そして前向きなメンタリティを
(サッカーの試合は延長戦や再戦にもつれこむこともある。長い消耗戦を乗り切るためには決して諦めない粘り強さと常に前向きで明るい姿勢、チームの一体感を育んでいきたい)

【次ページ】 現状は、素人が代表で戦うようなもの。

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