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ワールドラグビー次期会長は誰に?
大国に挑む45歳、ピチョットの野望。 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT

posted2020/04/16 11:30

ワールドラグビー次期会長は誰に?大国に挑む45歳、ピチョットの野望。<Number Web> photograph by Naoki Morita/AFLO SPORT

2018年、W杯日本大会開幕を控えたイベントに出席するピチョット氏。今年5月のワールドラグビー会長選挙に立候補した。

ピチョットが謳う「国際化」。

 一部では、ピチョットが、ラグビーのボーダーレス化に反対していると見なす向きもある。ピチョットはWRの副会長として、選手が母国とは別の国で代表資格を得るまでの期間を3年(36カ月)から5年(60カ月)に伸ばす案を推進した。昨年のワールドカップ中に、外国出身選手が多くを占める国のランキングを投稿したことも話題になった(最多はスコットランドで次点は日本。優勝した南アフリカと、アルゼンチンはゼロだった)。

 それらの言動から、代表主力に外国出身選手を多く抱える日本からはピチョットを警戒する声も、自国アルゼンチンへの利益誘導を狙っていると見做す声も聞かれる。

 だが実際は逆だ。ピチョットが謳うのはラグビーの国際化だ。

 ピチョット自身、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで生まれ育ち、学生時代は自国のサンイシドロ・クラブでプレーした後に渡欧。英国のリッチモンド、ブリストル、フランスのスタッド・フランセでプレーしたコスモポリタンだ。それぞれの国に独自のラグビー文化があり、才能ある選手が育っていることを実体験した。どこの国の選手も活躍の舞台を得られるべきだと考えている。

 そんなピチョットは、マニフェストも複数言語で発表。スペイン語には「unidos」、英語版には「togetherness」(ともに「団結」の意)という題をつけ、訴えた。

「ラグビーは、世界の限られた国だけで争われるべきスポーツではない。もっと多くの国で親しまれ、多くの国が国際コンペティションに参加してこそ、より多くのスポンサーが獲得できる」

「伝統国との連帯はもちろん必要だ。その財産、経験を多くの仲間とシェアしてこそ、ラグビーの価値をより高め、自分たちの価値を高めることができる。これまでのやり方を守るのではなく、世界が危機的な状況にある今こそ、ラグビーの未来を左右する重大な分かれ目(クリティカル・モーメント)なのだ」

 背中を貫くのは、青臭いほどのフェアネス。

 勝ち目はあるのか? と聞けば「薄いだろう」と答える人が多いかもしれない。相手は伝統国の本丸イングランドとその天敵だったフランスが組んだ、超大国同士の連合軍。ピチョットの友は伝統も実力も財力も乏しいスモールユニオンばかりに見える。だが、2003年にピチョットがワールドカップ日程の不公平改善を訴えながら8強に入れず敗退したとき、今日のようにアルゼンチンが世界主要国の一角を占める日が来ると誰が予想しただろう? 

「今こそ夢を現実にするときだ」

 ラグビーは、限られた国の限られた人たちが愛好するスポーツという立場にとどまっていいのか。それとも、より多くの国で、男性も女性も、宗教も経済状況も多様な人たちが親しみ、楽しめる、スポーツの枠を超えた存在を目指すのか――そう問いかけてきたピチョットは、マニフェストをこう結んでいる。

「今こそ夢を現実にするときだ。ラグビーは、これまで培った伝統と歴史をもとに、より現在的なテクノロジーを活用して、ラグビーというスポーツそのものを前進させよう。世界中のラグビー人が繋がる、ラグビーの未来に向けた姿を示そう」

 歴史は、常に変化・適応してきた者たちだけが生き残ってきたことを証明している。さまざまな前提が変化し続ける今、これまでの常識をなぞっていても正解にはたどり着けないことは明白だ。まして、現在は新型コロナウイルスのパンデミックで明日の世界も見通せない。どんな選択にもリスクはあり、成功は約束されていない。問われているのは、これをチャンスと捉えて変化への舵を切るのか、災厄と捉えて嵐が過ぎ去るのを待つのかだ。

 5月、世界のラグビーは、誰をリーダーに選ぶのだろう。

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