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ワールドラグビー次期会長は誰に?
大国に挑む45歳、ピチョットの野望。 

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大友信彦

大友信彦Nobuhiko Otomo

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photograph byNaoki Morita/AFLO SPORT

posted2020/04/16 11:30

ワールドラグビー次期会長は誰に?大国に挑む45歳、ピチョットの野望。<Number Web> photograph by Naoki Morita/AFLO SPORT

2018年、W杯日本大会開幕を控えたイベントに出席するピチョット氏。今年5月のワールドラグビー会長選挙に立候補した。

非・伝統国として初のベスト4。

 理はピチョットにあった。IRBのシド・ミラー会長(当時)は、2003年大会の総括会見で「ティア1」という言葉を初めて公の場で口にし「それは欧州6カ国と南半球のトライネーションズ、およびアルゼンチンである」と定義した。アルゼンチンはIRBが無視も軽視もできない主要国になったのである。

 4年後の2007年、ワールドカップフランス大会では公平な日程が組まれ、アルゼンチンは開催国フランスを開幕戦で破り、アイルランドには30-15でリベンジし、準々決勝ではスコットランドを破った。非・伝統国として初めての4強進出。準決勝でこの大会に優勝する南アフリカに敗れたが、3位決定戦では開催国フランスと再戦。34-10と圧倒し、世界3位までチームを引き上げた。

 実はこのとき、アルゼンチンに2度も煮え湯を飲まされ、自国開催の大会で恥をかかされたフランス代表の監督を務めていたのが、今回ボーモントと組んで副会長候補となったラポルトなのだ。因縁というか、わかりやすいというか。

参加国削減案にも猛然と抗議。

 因縁はまだある。このフランス大会のとき、IRBはワールドカップの出場国を20から16に削減する案を検討していた。4年後の2011年大会のホストとなったニュージーランドの経済的負担を軽減し、大差の試合を減らし、日程も公平化を図れるということをうたい文句に、2015年大会招致を目指していたイングランドが提案していた。だがこれに対しても、ピチョットは公然と反論した。

「ラグビーワールドカップは世界中から集まった20の素晴らしいチームがトップエイトを目指して戦うから価値があるんだ。ワールドカップが10や16の限られた国で戦うものになったら、それはラグビーの死だ」

 試合のたびに発せられたピチョットの熱い言葉とアルゼンチンの快進撃は、イングランドとIRBの目論見を吹き飛ばした。

 この大会を最後に代表を退いたピチョットは、ジャージーをスーツに着替え、世界ラグビー伝統国のエスタブリッシュメントたちが居並ぶIRB理事会に自らの戦場を移した。2012年からはアルゼンチンがニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアによるトライネーションズに加わり「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」という新しい大会が生まれた。2016年からはスーパーラグビーにアルゼンチンのチーム「ハグアレス(ジャガーズ)」が参戦した。ピチョットがかざす理想論は、伝統国の既得権維持を優先してきた世界のラグビーに風穴を開けたのだ。

【次ページ】 ピチョットが謳う「国際化」。

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