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復活誓うリリーバー、DeNA砂田毅樹。
テニスボールで思い出した感覚とは。
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKyodo News
posted2020/04/12 09:00
自主トレで感覚を取り戻したという砂田。「今年はマウンドで堂々としていたい」と語る姿は、リーグ開幕後の活躍を予感させる。
体全体で投げることを意識したことで。
砂田自身がピッチャーとして大事にしている感覚は“器用さ”だった。厳密に言うと手先の感度だという。どんなボールであっても扱えるような繊細なセンサー。
「ふと思い出したことがあるんです。ルーキー時代、当時投手コーチだった篠原(貴行)さんから『オマエは器用だし、手先でコントロールできるタイプだけど、それはいい点でもあり悪い点でもあるから気をつけろよ』って。以来、僕は体全体でボールをコントロールしようとしていた。それが逆に手先の感覚を失わせていたのかなって」
現在、編成部でスカウトをしている篠原にそのことを尋ねると「そんなことを言っていたんですか」と驚きの表情を見せた。
「たしかに手先の器用な選手で、彼が育成で入団したとき衝撃を受けたんです。真っすぐがカット気味に鋭く食い込んでいく。すごいなって。ただ、時間を経るたびに動かなくなってきて、見直そうということで、しっかり体全体で投げることを伝えましたね」
得るものもあれば、失うものもある。
結果的に篠原の言葉はタフなリリーバーとして砂田を成長させたが、同時に時間を経ることで失うものもあった。単純な足し算や引き算では計算できない微妙な感覚。とらわれ過ぎると見えなくなってしまうものもある。砂田は苦しみのなか試行錯誤の末、自主トレで気づき、自分を取り戻すことができたと感じている。
「今年はマウンドで堂々としていたい。それが一番。去年はボールに自信が持てなくて、おどおどしすぎてピッチャーらしさが出せなかった。だから調子がよくても悪くてもバッターに向かう気持ちや、マウンドに立てる幸せを感じながらピッチングができるように」