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鎌田大地の肉体を完璧にケアする男。
鍼灸師・黒川孝一、メディカルの極意。 

text by

中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2020/04/03 11:35

鎌田大地の肉体を完璧にケアする男。鍼灸師・黒川孝一、メディカルの極意。<Number Web> photograph by Getty Images

今や長谷部誠(右)ともにフランクフルトに欠かせぬ鎌田大地。黒川孝一は鎌田の肉体ケアも任されている。

長谷部が語った好選手の条件の1つ。

 もちろんクラブ、監督、選手それぞれで哲学に違いはあるだろう。「これではできないから、まだ復帰しない」と慎重になる選手もいれば、ちょっと無理してでも復帰したがる選手もいる。いずれにしても選手の発言が少なからず尊重されるということは、そこに責任感が伴うことを意味する。

「できる」といった以上、納得してもらえるプレーができなければならない。「できます」といって試合に出て監督が求めるクオリティのプレーを見せることができなければ、自己管理ができない選手との評価をされてしまう。無理をして出場を重ねてコンディションを崩したり、それこそ長期離脱となる負傷をしたりしたら、またイチからのやり直しとなる。

 だから選手は自分の身体と相談して、どこまで動けるのか、どうするのが望ましいのかを見定められなければならない。長谷部は「怪我をしないのは好選手である条件の1つ」と語っていたことがあるが、まさにそうなのだ。

「メディカルは難しいし、注意しないと」

 選手とメディカルスタッフの間には、しっかりとした信頼関係がなければならない。

 こういう治療をしたらこういう効果が出て、こういう状態になるということを説明し、治療して、休養を取ったらその通りになるという体験ができれば、選手は安心して自分の身体を預けることができる。

 ただし、負傷によっては非常に複雑なものもある。医学的には大きな問題はなくても、本人が痛くてできないというケースも出てきてしまう。

「例えば、グロインペイン(鼠径部痛症候群)。あれは痛みがすごく出るときもあれば、そうでもない日もある。だからコントロールが難しいんです。選手が『できる』と思ってやったら痛くてできないとか。痛くて歩くこともできない状態になったけど、次の日には治まっているなんてこともある。本当に、その日その日で違う。

 だからといって『その日次第』と言うと不信感が生まれちゃう。監督にもチームにも選手にも、『どうなってる』と思われちゃう。だから、うまくコミュニケーションを取らないといけない。メディカルの仕事というのは難しいし、注意しないといけません」

【次ページ】 頼ってくれる選手がいるやりがい。

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