欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
鎌田大地の肉体を完璧にケアする男。
鍼灸師・黒川孝一、メディカルの極意。
text by
![中野吉之伴](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/04/03 11:35
![鎌田大地の肉体を完璧にケアする男。鍼灸師・黒川孝一、メディカルの極意。<Number Web> photograph by Getty Images](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/2/a/700/img_2a5cf9b56dddf6e9de26015caa22d782153162.jpg)
今や長谷部誠(右)ともにフランクフルトに欠かせぬ鎌田大地。黒川孝一は鎌田の肉体ケアも任されている。
長谷部が語った好選手の条件の1つ。
もちろんクラブ、監督、選手それぞれで哲学に違いはあるだろう。「これではできないから、まだ復帰しない」と慎重になる選手もいれば、ちょっと無理してでも復帰したがる選手もいる。いずれにしても選手の発言が少なからず尊重されるということは、そこに責任感が伴うことを意味する。
「できる」といった以上、納得してもらえるプレーができなければならない。「できます」といって試合に出て監督が求めるクオリティのプレーを見せることができなければ、自己管理ができない選手との評価をされてしまう。無理をして出場を重ねてコンディションを崩したり、それこそ長期離脱となる負傷をしたりしたら、またイチからのやり直しとなる。
だから選手は自分の身体と相談して、どこまで動けるのか、どうするのが望ましいのかを見定められなければならない。長谷部は「怪我をしないのは好選手である条件の1つ」と語っていたことがあるが、まさにそうなのだ。
「メディカルは難しいし、注意しないと」
ADVERTISEMENT
選手とメディカルスタッフの間には、しっかりとした信頼関係がなければならない。
こういう治療をしたらこういう効果が出て、こういう状態になるということを説明し、治療して、休養を取ったらその通りになるという体験ができれば、選手は安心して自分の身体を預けることができる。
ただし、負傷によっては非常に複雑なものもある。医学的には大きな問題はなくても、本人が痛くてできないというケースも出てきてしまう。
「例えば、グロインペイン(鼠径部痛症候群)。あれは痛みがすごく出るときもあれば、そうでもない日もある。だからコントロールが難しいんです。選手が『できる』と思ってやったら痛くてできないとか。痛くて歩くこともできない状態になったけど、次の日には治まっているなんてこともある。本当に、その日その日で違う。
だからといって『その日次第』と言うと不信感が生まれちゃう。監督にもチームにも選手にも、『どうなってる』と思われちゃう。だから、うまくコミュニケーションを取らないといけない。メディカルの仕事というのは難しいし、注意しないといけません」