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鎌田大地の肉体を完璧にケアする男。
鍼灸師・黒川孝一、メディカルの極意。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/04/03 11:35
今や長谷部誠(右)ともにフランクフルトに欠かせぬ鎌田大地。黒川孝一は鎌田の肉体ケアも任されている。
スプリントが多かった試合だと。
選手たちの意識は高い。
「普段は『指のマッサージだけでいい』という感じですけど、例えばすごくスプリントの多い試合でハムストリングスが張った場合には、自分から『今日は鍼でお願いします』と言ってきます。もちろん、状態によっては僕から『今日は鍼にしましょうか』と提案することもあります。一方、『任せる』という選手も多いですね。『それは君の仕事だから君に任せる』と。そういう違いというのはあります」
一言で身体のケアと言っても、通常状態と疲労を抱えているとき、あるいは怪我をしているときでは、治療の仕方も変わってくる。
鎌田の場合、2月28日に行なわれたザルツブルクとのヨーロッパリーグ(EL)後に「疲労感はありますし、足の具合もそこまで良くはない。ホント、集中して試合に入らないとまた怪我しちゃうと思う」と明かしてくれたことがあった。
選手がそうした問題を抱えているときには、より重点的なケアをしていくのは当然だ。とはいえ、次の試合まで間隔が空いていない過密日程となると、通常に近い動きができるようにもっていくことは極めて困難な作業となる。
関節周りの動きを良くするように。
黒川は言う。
「(鎌田は)関節周りの動きを良くするようなケアを継続的にやっています。今はちょっと落ち着いていますが、足首だと直接鍼を刺すよりは、関節の動きをよくするためにその周辺の筋肉を治療したりとか、足首だけじゃなくて膝や股関節とかのバランスも整えるという感じになります」
メディカルスタッフには復帰までのプランがあるが、その通りに事が運ぶとは限らない。負傷からの復帰時期は監督からの要望、さらには選手の個性なども関係してくる。黒川は、ドイツでは選手の最終的な「できる、できない」という決断が尊重されると言う。
「もちろん僕らは『本人はできると言っているけど、こういう状況ですよ』ということは、選手にも監督にも話はします。そして最終的に決めるのは監督ですけども、監督が選手と本当にできるのか、どこまでできるのかという話をしていることが多いです」