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鎌田大地の肉体を完璧にケアする男。
鍼灸師・黒川孝一、メディカルの極意。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/04/03 11:35
今や長谷部誠(右)ともにフランクフルトに欠かせぬ鎌田大地。黒川孝一は鎌田の肉体ケアも任されている。
頼ってくれる選手がいるやりがい。
日頃から1つひとつ丁寧に仕事し、しっかりとコミュニケーションを取り、選手が落ち着ける雰囲気を作り出す。そうした積み重ねが信頼を強固なものにしていく。
だから、自分が一生懸命ケアした選手が活躍したときは自分のことのように嬉しくなる。チームが好成績を収めれば、自分も共に戦っている一員という誇りを抱く。
「日本にいるとき、当時サポートしていた高校サッカー部が選手権に出られたんですね。こっちでもチームの結果としてはニコ・コバチ監督時の2016-17シーズンにドイツカップ準優勝、2017-18シーズンは優勝。アドルフ・ヒュッター監督になってヨーロッパリーグ出場もできた。
チームがステップアップする場にいれるのはすごいモチベーションやし、自分がよく見ている選手がいいプレーをしているとか、怪我せずできているときなんかは嬉しいです。頼ってくれる選手がいるというのが、一番のモチベーションですね」
スタックワークも風通し良く。
昨シーズンのフランクフルトは、ヨーロッパリーグ4強という輝かしい成功を遂げた。今季も過密日程を戦い抜きながら、チームのクオリティを低下させないため、ヒュッター監督はやりくりに苦心している。
クラブはフィジオの人員を増やし、それぞれ役割分担しながら、選手のケア体制をより良いものにしようと取り組んでいる。リハビリはフィジオがメインで入り、黒川は比較的健康で試合に出ている選手を中心に治療している。常に試合に同行して、選手のコンディショニングをサポートできる位置で奮闘している。
「楽しい雰囲気づくりを大切にしていて、冗談が好きで気さくですね。スタッフとも距離が近いですね」とは黒川のヒュッター評だが、フランクフルトは、そうした関係性がとても良好そうだ。
チームワークは選手にだけ求められるものではない。スタッフワークもとても大切だし、各部署間のネットワークも密で、風通しがいい方がいい。現代サッカーはまごうことなく総力戦なのだ。
(前編ではフランクフルトで得た信頼ぶりについて触れています)