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ドクター・中松の元祖(?)厚底。
「スーパーピョンピョン」レビュー。
text by
山田洋Hiroshi Yamada
photograph byKiichi Matsumoto
posted2020/03/19 20:00
「スーパーピョンピョン」を手にするドクター・中松氏。91歳ながら矍鑠として衰えを見せない。
立つのは難しいが、走ると凄い。
装着の次は、立ってみる。
ところが、これがすごく難しい。立って静止しようとするのだが、弧を描いたバネが、面ではなく点で地面に接しているからだ。弾むバスケットボールほどの球体に立つような私は、まるで生まれたての小鹿のようにプルプルと震えてしまい、横でみていた編集者が思わず手を差し伸べてくれた。
でも大丈夫! ここまでは形状をみたときから想定内でもあった。スーパーピョンピョンシューズの本領発揮はここからだろう。
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静止は確かに難しいが、バネの力を使って上下に軽く跳ねるとすぐに安定するではないか。トランポリンのようで、それだけで楽しくて、自然と笑顔が出てくる。いつだったか、氏が上下に跳ねながら選挙演説しているシーンを思い出した。スーパーピョンピョンシューズは「静態」のための履物ではない。ランニングなど「動態」のためのシューズなのだ。
そして、跳ねたまま少しずつ前傾姿勢になると、勝手に走り出してしまうではないか。ゆるやかな前傾姿勢はランの基本フォームだ。
ランニングでは真っ直ぐに立った姿勢のまま、倒れ込むように前傾すると脚が自然と前に出る。これを繰り返すと、人は前に進むことができる。まさかスーパーピョンピョンシューズでも同じ原理が発動するとは思わなかった。
走るというより、浮遊?
走り出すと、トランポリンの感覚が全身に伝わってくる。一歩踏み込むとバネがその衝撃を吸収するのがわかり、そして、そのエネルギーが推進力に変換されてワンテンポ遅れてやってくる。タタタタっと走るというよりは、まるで重力の違う月か別の惑星を浮遊しているような感覚に襲われた。
着地はミッドフットかフォアフットがいい。足首や膝は固定し、シューズが持つ衝撃吸収と反発の独特のリズムに身を預ける“受け身走法”が履きこなすコツだ。決して地面を蹴り上げてはいけない。
前進を続けていると、足底筋膜炎とシンスプリントに似たほのかな痛みと体幹へのプレッシャーを感じてくる。着用者へのトレーニングを要求してくるかのようだ。履きこなすには少々の時間を要しそうだ。