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二度の世界大戦以来の中止危機。
セリエA次第でEURO延期も現実味。 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2020/03/17 19:00

二度の世界大戦以来の中止危機。セリエA次第でEURO延期も現実味。<Number Web> photograph by Getty Images

ヨーロッパにおける新型コロナウイルス感染拡大の中核となっているイタリア。この状況ではカルチョを楽しむことはできない。

世界大戦でしか中止していない。

 長靴の国で1世紀以上の歴史を誇るカンピオナート史上、これまで全国リーグが“中止”されたことは2度しかない。

 105年前(!)の1915年5月、第1次世界大戦へのイタリア参戦によって、セリエAの前身にあたる1部リーグ「プリマ・カテゴリア」は最終節目前のタイミングで中断となり、戦火拡大に伴いそのまま中止になった。

 2度目は、第2次大戦勃発後もリーグ戦を止めなかったセリエAが連合軍とナチス勢力に国土を分断され、ついに開催続行を断念した1943年9月だ。

 イタリアの街角から人影が消え、僕の住む町でも馴染みのバールが次々に閉まっている。

 3月10日の新措置発布以降、近所へ外出するにも感染リスクを承知済みだという自己申告書の携行が義務付けられ、出掛けた先のスーパーマーケットでは制限入場の順番をめぐって、住民たちが医療用マスク越しに口論している。さもなくば、誰もが息を潜めて家にこもり、見えない敵に怯えて戦々恐々と過ごしているようだ。

 現地メディアの日々の報道には「これは人類とコロナウイルスとの存亡をかけた戦争である」という表現が飛び交っている。大袈裟に思われるかもしれないが、それが2度の大戦を自分たちの国土で経験した欧州の認識なのだろうと思う。

 だから“ある程度の犠牲もやむなし、されど守るべきものは絶対に守る”という覚悟や悲壮感が社会全体に漂っている。

感染した選手からの悲壮な訴え。

 セリエC・レッジャーナのDFアレッサンドロ・ファバッリは、国内2番目となるコロナウイルス感染プロサッカー選手だ。

 3月8日に陽性反応が出た後隔離状態に入り、11日付『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のインタビューに応えた。熱と頭痛はあったものの市販の解熱剤ですっかり回復した、という彼は危機感を露わにして「欧州中のサッカーが全面的にストップするべきだ。もはやイタリアだけの問題じゃない」と訴えている。

 EURO2020延期も、もう“まさか”ではない。

 ヨーロッパは何が起きても不思議ではないところまで来ている。

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