スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
損害708億円、バルサ棚ぼた3連覇?
コロナでリーガ終了なら混乱必至。
posted2020/03/16 19:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
REUTERS/AFLO
数日前のことだ。外出先から帰宅する際、サグラダファミリアにほど近い自宅の斜め向かいに救急車が停まっていた。
「そういえば最近、よく救急車を見る気がするな」
そう思った矢先、背筋が凍った。その救急車から、防護服で全身を包んだ人物が出てきたからだ。
悪化の一途を辿る他国の惨状を見聞きしながらも、どこか対岸の火事のような感覚が拭えなかった新型コロナウイルスの脅威は、気づけばすぐそこまで近づいていた。
スペインのペドロ・サンチェス首相が「非常事態」を宣言する意向を表明したのはその2日後、3月13日のことだった。
原則15日間の効力を持つこの宣言下では、政府が国民の移動を制限するなど、例外的な措置を取ることが可能となる。
フランコ総統による独裁体制の崩壊以降、スペインで非常事態が宣言されたのは航空管制官による大規模なストライキが生じた2010年12月以来、2度目のことである。
マジョルカ、テネリフェ、バルセロナで。
「ウイルスとの戦いはまだ第一段階にある。厳しい数週間が待っているはずだ。来週中に感染者が1万人に達することも否定できない」
サンチェス首相はそう言って国民に理解と協力を呼びかけた。
スペイン国内で初めて新型コロナの感染者が確認されたのは1月31日。カナリア州ラ・ゴメラ島に旅行に来ていたドイツ人だった。
2月9日にはバレアレス州マジョルカ島、同24日にはカナリア州テネリフェ島で感染が発覚。スペイン本土における初の症例は翌25日、カタルーニャ州バルセロナ市で確認された。同市在住のイタリア人女性で、感染者の多いイタリア北部での滞在歴があった。