酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
甲子園出場→東大合格者が出たけど。
MLBでハーバード大卒は珍しくない!
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2020/03/20 19:00
2020年、東大を率いる井手新監督(右)と笠原主将。彼らのような存在がプロに近づく実力をつければ野球界もさらに盛り上がりそうだ。
当初の甲子園はエリート学生の大会。
一方で東大野球部選手の出身校の中には、聖光学院(神奈川)、栄光学園(神奈川)、広島学院(広島)、久留米大附設(福岡)のように軟式野球部しかない高校もある。
もともと日本野球はアメリカのお雇い外国人ホーレス・ウィルソンが第一大学区第一番中学の生徒に手ほどきをしたのが始まりとされる。第一番中学はのちの第一高等学校、東京大学である。
日本野球は最高学府の生徒から広まった。だから明治中期まで日本最強の野球チームは第一高等学校だった。その後、早稲田、慶應などが強豪に名乗りを上げ、こうした名門大学の卒業生が全国に野球を広めた。
1915年に夏の甲子園の前身である全国中等学校優勝野球大会が始まった。中等学校は今の高校に相当するが、進学率が低い戦前は、地域のエリートが進む学校だった。つまり当初の甲子園大会はエリート学生の大会だったのだ。今の東大野球部選手の出身校で、古い甲子園実績がある高校は、おおむね当時の名門中等学校の流れを汲んでいる。
しかし甲子園人気が高まるとともに、実業学校など新興学校が台頭し、地域の名門校はしだいに甲子園から遠ざかっていったのだ。
日本野球はエリートが嗜むスポーツとして始まったから、もとは「文武両道」が当たり前だったが、野球人気の高まりとともに「文」と「武」二つの道が大きく分かれていったといえよう。
東大→日本ハム宮台より高学歴は……。
ただ、これは日本野球特有の状況であるかもしれない。
今のNPBで、最高の学歴を有する現役選手は誰か。それを考えてみるだけでも気づかされることがある。
日本ハムの宮台康平(東大法学部卒)か? そうではない。世界大学ランキングで言えば、昨年まで楽天所属、今季から千葉ロッテ所属となったフランク・ハーマンなのだ。ハーマンは、ハーバード大学経済学部の学位を有している。
世界大学ランキングではハーバード大は第7位、東大は36位だ。
ハーバード大となれば究極の「文武両道」と思うかもしれないが、アメリカでは全く珍しくない。