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実は凄いアタランタCL8強の快挙。
お祝いは“あの敵”を倒したあとで。
text by
神尾光臣Mitsuomi Kamio
photograph byGetty Images
posted2020/03/18 07:00
無観客のメスタージャはやりづらい雰囲気だっただろう。しかし4得点を挙げたイリチッチをはじめアタランタはCL8強に値する戦いぶりだった。
戦術と個人技の融合で奪った得点。
ゴメスが左からクロスを上げれば、右アウトサイドのハテブールが中へ絞ってボレーで合わせる。バレンシアの守備陣がサイドを気にして中央の守備を緩くすると、今度はイリチッチが中央から崩していく。その連続……。
得点は戦術と個人技の融合によるもので、3点目は精力的なプレスから相手に先んじてルーズボールを拾ったフロイラーが、まるで往年のデルピエーロかと見紛うような右足インフロントで巻いたゴールだった。
止めの4点目は、相手の攻撃を受けながらのロングカウンター。前線で巧みなパス交換を織り交ぜながら、最後は縦に激走したハテブールが前線へ飛び出す。そのままネットを揺さぶってみせた。
ただ、舞台はCLである。個々の技術が高い相手を走り込んで押さえ込んでいくのは、やはり大変な作業である。いつもは試合終盤まで攻撃を続けられるアタランタも、1点を返されたのちは足が止まり防戦一方になった。
「バレンシアの中盤がとても良く、自分たちが慎重になりすぎた時間帯もあった」とガスペリーニ監督は記者会見で語っていたが、第2レグを考えれば不安要素でもあった。
しかし彼らに、ペースを落として試合をコントロールする考えはなかった。指揮官は「我々にそういうことはできない」と開き直り、第2レグでも同じようなゲームプランを立ててきたのだ。
限界のさらに上を引き出す指揮官。
そうして迎えた第2戦の開始3分。右サイドをスピーディーに崩し、最後はイリチッチがファウルを誘ってPKを奪い、決定的なアウェーゴールを奪ったのだ。
その後ミスにつけ込まれて同点とされるも、攻撃の姿勢は変えない。前半終了間際にPKを奪取。諦めず攻めてくるバレンシアにあっさり隙を与えて2ゴールを奪われたものの、それでも攻撃を続ける。
そして、追い上げを図るために飛ばし過ぎた相手がペースダウンするのを尻目に、得点を重ねていったのである。冒頭で紹介した通り、そこには選手たちの能力を理解しながら、限界のさらに上を引き出そうとするガスペリーニの指導があった。
「試合結果は内容を反映していない。彼らのゴールはみなゴラッソばかり。そんなことはそうそう続くものではない」。第1レグ後、バレンシアを率いるアルベルト・セラーデス監督は語っていたが、完全な見当違いとなってしまったわけだ。