ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
ブンデスで連鎖した横断幕問題。
その訴えは信念か、個人の中傷か。
posted2020/03/10 11:50
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph by
Getty Images
新型コロナウイルスの発生は社会生活に深刻な影響を与え始めています。日本では学校の休校要請がありましたし、Jリーグは一時中断を決断し、他にもコンサートなどの各種イベントが中止もしくは延期となって、人々の活動の停滞が憂慮されています。
僕の住むドイツでも、新型コロナウイルスの影響が如実に感じられるようになりました。日本ではトイレットペーパーの買い占めなどが起こっているようですが、ドイツでも特定商品の品薄が発生しています。
店頭にトイレットペーパーは見かけますが、手洗い奨励の流れからハンドソープの売り切れが続出! ちなみに、このように物を買い占める行為を、こちらでは『Hamsterkauf(ハムスター買い)』というのだそうです。これは、食料を溜め込むハムスターの習性になぞらえてできた造語だそうです。
ドイツでは、トルコの政策変更によるシリア難民のヨーロッパ地域流入のニュースも、注目されています。そして、サッカーの世界でも深刻な出来事が……。
バイエルンサポが掲げた侮蔑的横断幕。
2月29日に行なわれたブンデスリーガ第24節のホッフェンハイムvs.バイエルン戦で、バイエルンサポーターによる特定個人への侮辱的横断幕掲出が起こったのです。そのため、ホッフェンハイムとバイエルンの両チームが協議のうえ、当該サポーターへの抗議の意を込めてプレーを拒否。試合残り13分間は、両チーム同士でパスを交換し合ってゲームを終了させたという事案です。
一部バイエルンサポーターの攻撃対象はホッフェンハイムの支援者にして、ヨーロッパ最大級のソフトウェア会社『SAP SE』の創業者の1人であるディートマー・ホップ氏です。
ホップ氏はドイツのハイデルベルク出身ですが、10代の頃にホッフェンハイムのユースチームに所属した経歴があります。
つまりサッカーへの造詣と地元への愛着を兼ね備えた人物と言えるでしょう。ホップ氏は1990年代に当時8部リーグ(相当)に所属していたホッフェンハイムへの出資を開始して強化を進め、クラブは2007-08シーズンに初の1部昇格を果たしました。