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ブンデスで連鎖した横断幕問題。
その訴えは信念か、個人の中傷か。 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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posted2020/03/10 11:50

ブンデスで連鎖した横断幕問題。その訴えは信念か、個人の中傷か。<Number Web> photograph by Getty Images

ドイツサッカーで横断幕が連鎖的に問題化した。本来はサッカーそのものを盛り上げる舞台装置であるはずだ。

ホップ氏が裁判を起こしたことで。

 ところが、ホップ氏がケルンやドルトムントのサポーターに対して刑事罰を科す裁判を起こしたことで事態が悪化していきます。そしてDFBのスポーツ裁判所は2020年2月に急きょ、ホッフェンハイム戦におけるドルトムントサポーターの今後3年間の入場禁止を発表しました。

 しかも、バナーを掲げた当該サポーターだけでなく「連帯責任」で全ドルトムントサポーターに適用されるとアナウンスされたため、凄まじいハレーションが起こりました。

“執行猶予”を無効化したうえ、すべてのドルトムントサポーターがプレゼロ・アレナに入れないという不可解で厳しい裁定に対し、ドルトムントサポーターだけでなく、様々なクラブのサポーターが反発したのです。

 件のホッフェンハイムvsバイエルン戦と同節に行なわれたケルンvs.シャルケ戦、ドルトムントvs.フライブルク戦、ウニオン・ベルリンvs.ヴォルフスブルク戦においても、各サポーターからホップ氏を中傷するバナーが掲げられました。

月曜日開催に対しても明確なNO。

 彼らサポーターの主張には、企業が営利目的でサッカークラブに参画することへの否定と、その方針を堅持すると宣言していたはずのDFBが宗旨変えしたのではという猜疑心と嫌悪感が根底としてあるのです。

 ドイツの方々には自らの信念をしっかり主張すべきという考えがあります。その思いは度々サッカーの世界でも投影されます。

 例えば、テレビ放映の都合やヨーロッパカップ戦と国内リーグの並行開催による影響で金曜日や日曜日、ときには月曜日にブンデスリーガが開催されることについて、サポーターが抗議運動を行うことがあります。

 2月24日のブンデスリーガ第23節のフランクフルトvsウニオン・ベルリン戦はフランクフルトがヨーロッパリーグに出場するため月曜日開催となりましたが、これに抗議したサポーターがゴール裏への入場を拒否し、無人のスタンドに『Montag(月曜日)』の文字に斜めの線を引くバナーを置いて『月曜日開催はノー』の主張を行いました。

【次ページ】 今回の振る舞いに関しては……。

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