熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
ロナウジーニョ逮捕劇の一部始終。
40歳誕生日はパラグアイ留置所か。
posted2020/03/10 20:30
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
REUTERS/AFLO
3月7日午前10時、ロナウジーニョと兄で代理人のアシスが、捜査関係者に周囲を固められ、パラグアイの首都アスンシオンの裁判所の通路を歩いてきた。長時間の取り調べを受けるためである。
現役時代、超人的なテクニックと独特の笑顔で世界中のフットボールファンを魅了した稀代のマジシャンは、黒いベレー帽を被り、白い無地のTシャツに黒のズボンという簡素ないでたち。これまで誰にも見せたことがない、ひどく悲しそうな表情を浮かべ、目には涙が滲んでいる。
体の前で合わせた両手は、薄紫の大きなタオルに覆われていた。アシスの両手には手錠がかけられており、彼も手錠につながれているのは間違いない。
衝撃的な光景だった。
自伝のPRでパラグアイに向かった。
3月4日朝、ロナウジーニョとアシスはサンパウロ国際空港を飛び立ち、アスンシオン国際空港へ到着した。
ダリア・ロペスというパラグアイ人女性実業家の招きで7日まで滞在し、この女性が主宰する貧しい子供たちのためのNGOのイベントに参加したり、自分の半生を描いた本のプロモーションをするのが目的だった。
サンパウロ空港の出国手続きではブラジルのパスポートを提示し、パラグアイ空港の入国手続きではパラグアイのパスポートを示した。そこには、「ブラジル出身のパラグアイ国籍取得者」と記されていた。
空港へ出迎えたダリア・ロペスに付き添われてNGOのイベントに参加し、地元ラジオの番組に生出演してから、アスンシオン郊外にある高級ホテルのスイートルームに落ち着いた。
ところが、午後10時過ぎ、予想外の来訪者があった。パラグアイ警察の関係者である。